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☆銀魂の小説(真選組/長編)
5―マヨネーズとサングラス(完)
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「あ、あのモジャ頭は想い人なのか?」


食事を終え 自室に戻る部屋の前で呼び止められてしまった

突然のプライベートな質問が不愉快だった


『…何です?』


土方「偶然、お前とカフェにいるのを見た…
あんたと別れた後、どうやら あの男はキャバ嬢を追っかけ回してたぜ」


『そんな事…言う為に来たんですか?』


土方「あんな男に振り回されるなんて、お前らしく無ぇんじゃねぇか??」


『私らしいって 何?』


折角 さっき近藤が止めてくれた涙が堰を切った様に流れ落ちる

大泣きはしないものの ポタポタと伝う、飾らない、しかし冷えた涙

思い出しちゃったから
さっき沈めた、失恋特有の悲しさとやるせなさ


声も出ないよ、
そんな涙で溢れる―――


『けっこー…真選組には貢献してるつもりなんだけどな…
ねぇ土方さん、私のことキライでしょ…』


土方「…!」


『私の心ん中 混ぜっ返して…楽しい…?』


土方「俺は…」


『馬ぁ鹿』


そう吐き捨て
彼の目から逃げるのが精一杯だった


涙を見られた事も 失恋に口を突っ込まれた事も
全部 忘れたくなっちゃった


彼に背を向けて
走り出す瞬間


腕を引っ張られた


そして肩を捕まれて


向かい合わせに直され
土方さんは私を抱き締めたのだ


『え?』


土方「…」


煙草の薫りと 隊服に染み込んだ彼自身の匂いに包まれ

何も言えない
何も聞こえない


お互いの心音だけが 響いて
お互いの感触だけが お互いを占めた
時間が止まる


土方「キライじゃねー…よ」


耳障りな 低い声


土方「これ以上…俺を…掻き乱すな………」


余韻を残して 直ぐ様

弾かれた様に 彼は走り出して

頭の整理がつく前に もう姿は点になっていた


『な…』


なんなの?
「掻き乱すな」ってなんなの?

抱き締めて…なんなの?逃げた?
そっちこそ、私を掻き乱すなって話じゃない?


そう 彼の不可思議な今しがたの行動への疑問符が
頭の血を沸騰させるから

私も走り出して、彼を追いかける

特殊能力の全力疾走、「韋駄天ファイヤー」(速攻で追い付く凄い能力だよ!)にて!


土方「ヒィィ!お、おま!?」ビクッ


『さ、さっきのって何なんですか?』シュタタタ


土方「べべべ別に?深い意味とか無ぇし…」


私は彼の隣に
ぴったりと寄りながら走る


『意味が無いような抱擁には思えなかった!なんなの?さっきの なんなの?』


土方「う!うるせぇぇぇぇぇ!」


『そういやどうして私が恋愛で悩んでるの知ってたの?ねぇねぇどうして?』


土方「つ、つつつついてくんなぁぁぁ」



彼の息が少し切れてきたが
お構い無しに並走を続ける


『ねぇねぇ どうして?』


土方「た、たまたまだろぉが!」


『どうして顔、赤いの?』


土方「走ってるからに決まってんだろォォォ」


沖田「楽しそうですねィ仁和、土方さん 追い回して何かあったんですかィ?」


『あ!総悟殿、いいところに!土方さんが顔赤いんですよ、熱でもあんのかと思って』


沖田「そいつぁ心配だぁ、取っ捕まえて この新種の風邪薬でも試してみやしょう」


土方「風邪じゃねぇっての!総悟 てめぇ面白がってんじゃねぇぇぇー!」


近藤「あれ?皆何してんの?珍しい組み合せで追いかけっこか?」


土方「うおおぉぉぉぉ!?何でナチュラルに加わってんだよ 近藤さん!」


『近藤さん いいところに!土方さんがおかしいんです!早く捕まえて どうにかしないと!』


近藤「え?そうなの?トシ おかしいの?」


沖田「やだなぁ、土方さんがおかしいのは今に始まった事じゃないでしょう、はやく全ての苦しみから解放してあげやしょう、
息の根でも止めて」


土方「おかしいのはおめぇらの頭だぁぁぁぁ!チクショウー」


ぎゃーぎゃー


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待ってなさい土方副長…絶対捕まえて、問い質してやるんだから!!

その一心で続けた追いかけっこは、11時間続いたという。


end



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あきゅろす。
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