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☆銀魂の小説(真選組/長編)
lip(彼目線)
土方「近藤さん、午前中見かけなかったけど何してたんだ?」


近藤「ちょっとお妙さんのボディーガードに」


山崎「あ…だから隊服の袖が破れてるんですね」


近藤「うーん、もう少しで 彼女が茶を飲んでいた湯飲みに口が届きそうだったんだが、あと一歩という所で見つかって、な」


土方「…近藤さん、またそんな事してたのか…」


山崎「ざ、残念でしたね」


近藤「うん…ほんとにもう少しで間接キスだったんだが」


土方「…近藤さん、言っておくがソレはストーカーだからな」


間接キス…

確かに一種のロマンだ

可愛い女の子、好きな女の子と唾液交換…もとい物体を介してチュッと……


あれ…何で俺は今 間接キスの相手を仁和で想像した?

彼女は隊士だ

一般女性とは違う…同じ志を持つ仲間なんだ…から、ヘンな妄想は………
いや、一般女性と繋がりを容易く持てるのなら苦労はしない
同じ隊士でもない限り、仕事への理解も難しいだろうし スレ違うことも多くあるだろう…

いやだからといって何故 仁和の顔が…



『山崎さん』


山崎「わー!!」


『わぁッ??』


山崎「あ、ご、ご、ごめんなさい 考え事してててて…」


『えっと…副長が、後で見回りのついでにマヨボロ買ってきてくれって…』


山崎「あ、は、はい…ん?後での見回りって 仁和隊長と行く予定の? 」


『あ…私、メンバーチェンジしてもらおうかなって…』


山崎「具合でも悪いんですか?」


『いや………』


山崎「?」


『今、どんなエッチな考え事してて、わー!とか言っちゃったのかなって…』


山崎「違げぇぇぇぇよぉぉォォォォ!!エッチな、とか無いから!ちょ、ちょっと考え事してただけだっての!誰にでもあるでしょ!?ボーッとしちゃうそんな時!」


『そんで、その妄想の哀れな被害者がどうやら私だったりして 一緒に見回り行くのも気マズイなぁなんて理由からメンバーチェンジしようかと』


山崎「エッチな考え事してねぇってぇぇぇ!!そしてどんだけ自意識過剰なんだよぉぉォォォォ!?」


畜生ォォォォ何故バレてんだぁぁぁぁ!?エスパーかこの子!!


『山崎さん…顔真っ赤』


山崎「アンタがヘンな事言うからだろ!!」


『…怒った?』


山崎「……べつに」


怒った?って…そんな風に 小首を傾げられたら 目を逸らしてしまう

何、そのカオ…

ちょっと可愛いからって調子に乗ってんなよ…


『ところで山崎さん…飲みます?』


山崎「…えっ」


『飲みさしで嫌じゃなければ……だって、唇カサカサですよ?』


山崎「アンタが叫ばすからじゃ…あ、いや、ありがとうございます。いただきます」



彼女の差し出したペットボトルのお茶は、飲みさしと称したものの 殆ど量は減っていなそうだった

確かに喉は渇いていて

けどどうして 彼女は気付いたのだろう?


しかし間接キスがどうとか、局長が話をしていたことを思い出して 一瞬、戸惑ってしまった

仁和も一端の女性だし 気にしないのかなぁ…

今日の献立についての話題を振りながら それとなく顔色を伺う


冗談を交えると ふわふわ笑ってくれるし気に止めてもいない様だ

さっきのドSっぷりが嘘みたい…

俺は喉を鳴らしお茶を流し込む
半分くらいまで 量の減ったペットボトルを恐る恐る彼女に返す


おかしな嫌味やからかいを言われるかと身構えもしたが、全くそんな気配は無く
それどころか、


『お茶のついでに、嫌じゃなければ使ってみませんか?』


そう言って、また使いさしと称した 今度はリップクリームを手渡された


『カサカサリップに効果抜群ですよ?あげましょうか』


「え、これ、つ、使わないの?」


『新しいの、買ってしまったんです。それは透明なんですけど、今使ってるのは薄いピンクで…それに!山崎さんなら 仕事柄 女形にも使えるでしょ、ね?』


『ね?』と呟いた 形の良い唇は
それはそれはキレイに弧を描くので つい 受け取ってしまった


『退子ちゃんの唇には乾燥は似合いませんよ』


いたずらっ子みたいに笑いながら


『私のお古だけど、ちょっとしか使ってナイから…イイよね?』


静かに流し目で唇を鳴らし 歩いて行って仕舞った


そんな仕草は狡いと思った

イイよね?って何だよ…

何で 俺が受け取るって分かってるんだよ…
決めつけんなよ…クソッ


こんなにタイミング良く間接キスのネタを振って来るなんて
きっと、先程の近藤さん達との会話が聞かれてしまったんだ

意地の悪い………


そうに違い無い!


いや、待てよ、だとしたら 何でわざわざ
俺に間接キスを…させ…??

ッッ…………

お、俺の事……まさか、そそそそ…んな!!



ぶわっ、と
耳まで熱くなってしまった瞬間 もう随分距離が開いてしまった立ち位置の 仁和が振り向く


『山崎さーん、ソレでオナニ○とかしないで下さいねー』


山崎「しねぇぇぇぇよぉぉォォォォ!!下品かよ!しかも伏せ字にしてる意味全く無ぇからな!!」


今度こそ、彼女は角を曲がり 行ってしまった


…………うん、無い

あの 仁和が俺の事好きとか絶対無い
甘い夢見すぎた
手酷くからかわれただけだ…


その日はホントに一緒に見回りのメンバーチェンジされたし

なんなんだよ…

もう騙されないからな…!!


ブツブツ独りごちて しかしポケットの中のリップクリームを指先でなぞり 思いを馳せてしまうのは、悲しい男の性だろうか…


このまま 深みに嵌まらない程度になら…なんて、ねぇ…


俺は少し 君に惑わされているみたいだ


end



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あきゅろす。
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