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☆銀魂の小説(真選組/長編)
4―アイマスクとキレイな恋(完)
気の強いヤツが 見せた初めての涙は振り向き様
俺がずっと見たかったモンだった、と思う


気丈な娘の鼻っ柱を折る
小生意気な女心をへし折る
気位の高い美人を泣かせたい
気になる女子を泣かせたい


いじめっ子らしい心模様でからかっていた、と思う


仁和にかまけている内に もっと仁和の事が知りたくなってきた


自分と年の近い隊員だったせいもあるだろうが
其処まではただの好奇心


けれど彩りのある表情に魅せられていく

じわりじわり
半紙が墨を吸う速度で


俺ばかり 訳の判らない胸のつっかえに踊らされるのは癪で
俺にも目を向けて欲しくなった

俺の為に感情を揺らして欲しかった


泣き顔は見たかったけれど
他の男の為に流す涙では
何も 満たされやしねぇ


それも一番いけ好かない上司の容姿をした、オタク男さ

モヤモヤが止まらねェ


それ所か―――
それ所か―――


さっきまでピリピリしてた言葉は刺を収めて
自分よりも小さなその身体を抱き締めていた


「泣く…な」

『a-ha?どの面下げて…』


キッと釣り上がった眼差しをスルリ 流して


減らず口の五月蝿い唇を
更に 減らず口の俺の五月蝿い唇が
押し付けて塞ぐ


「…」

『…』


睨む仁和

目を閉じて味わう

触れ会っている唇はそのまま

塞ぐだけの口付け


感じ合う お互いの心音


次の瞬間


『』べろべろべろ

沖田「!?」


仁和の挑戦的な舌が
奥ゆかしさなど微塵も無く俺の口内を荒らす


戸惑いながらも負けじと
冷静に、出来るだけ冷静に、その舌を 甘く噛み、吸う


更に更に負けじと
今度は俺の歯列をなぞろう
と、
した舌の動きを察知した所で

廊下の向こう
から数人の隊士達の話声が聞こえた


―そうだ ここは廊下だ―


俺と同じように思い出したに違いない


俺の足を一蹴りし、

「ぐぉ」

と 崩れたバランスに悶えた声を導く


重力に任せ、くっつけた唇はそのままに
目の前にあった 仁和の部屋に雪崩れ込み
なしくずし的に連れ込みが完了した


後は 偶然を装い、計算づくで足でちょちょいと器用に襖を閉めるだけ


沖田「大胆らなァ」

『おまふぇもな』


俺を押し倒した形になった仁和は やはり舌で歯列をなぞる


夢うつつの体温に溺れて、やや呼吸が乱れてきた自分の心音の赴くまま、仁和の下唇を甘噛み

熱っぽくなってきた男の性を知ってか知らずか


『こちょこちょ』

沖田「ブフォ」


まだまだ 焦らす。


照れた意識を取り戻し、お互いにやっと離れた唇を袖で拭いて
呼吸を整える


沖田「ったく可愛げが無ねぇな」


『そっちこそ
人の恋路を邪魔して泣かせてキスしてってどーゆー趣向だよ』


沖田「さっき 汚らわしい土方にキスしちまってたから お清めしてやったんでさぁ」


あーあ、せっかく素直になれそうだったのに…やっぱり出てくるのは憎まれ口じゃねェか

なんて横目で溜め息を吐く


―「あんな男、録でもねぇよ」―
―「俺ならもっと…もっと…」―


さっき飲み込んだクサい言葉が思い出されてむず痒い

口に出さずにいて良かったんじゃないかとも思った


「元気そうじゃねぇかィ…
アクロバティックにお前のお部屋に連れ込んでくれちゃって」


『あんな所、他の隊士達に見られて堪るか』


沖田「さっさと俺を引き剥がせば良かったんでぃ」


『馬鹿め、こっちは計画も邪魔されたし
何度も泣かされてんだから
お前にも一発 ギャフンと食らわせてやんなきゃイライラして夜も眠れないの』


沖田「俺の事が頭から離れなくて夜も眠れないなんてロマンチックだろーが」


『そんなのロマンチックじゃないし。バカタレドS』


沖田「何でィそのカオ
そりゃ 誘ってるんですかィ?
形はどうあれ 俺の為にキレイになろうとしてくれてやしたもんねェ?」


『………』


沖田「俺にギャフンて言わせたい?」


『…っ!』


思い出したように仁和の頬が染まる


『そーゆー妄想でもしながら
私の事が頭から離れなくなって夜も眠れなくなれ、バーカ』


沖田「もう眠れねぇよ」

沖田「言っておくが キレイになったらなった分、からかうのは辞めねぇからな…」


言葉の羅列に羞恥したのか
同じタイミングでバッ、と

お互いにそっぽ向いた二人の頬は
紅を点した様な色艶


『…からかうだけなら…火傷しないうちに逃げちゃおうかな?』


沖田「うるせぇな、おまえが逃げ出すタマかよ
また塞ぐぞ」


薄暗い部屋、この静かな四角の中で、漸く二人 見詰め合う


沖田「結局の所、ホントに土方のヤローのことは…本気じゃねぇよな?」


『別にぃ…関係無いでしょー?』


沖田「答えろよ」


『調子こくから嫌』


目を叛け 仁和は口を袖で隠す様に掻気に 次のセリフを練る


沖田「聞きたいなァー
心が寒みィなぁ…俺ァ打たれ弱ぇーんだ、凍死しそうでさァ」


『おまえが言えよ、私のこと好きって…』


言い終わらない内に俺の唇で
また栓をされるのを待ってる

そんな眼差しに 胸が熱くなるけど、直ぐに離れてしまう短い口付けで 翻弄される


沖田「そこは [暖めてあげようか?]じゃねぇんですかィ?」


沖田「仁和、キレイで可愛くて、ギャフンと来ますねィ」


夜もゆるりと流れる屯所に
真っ赤なカオで乙女の黄色い声と拳が響いた


『そんな雑なギャフン 言わせたいんじゃねぇボケー!』


――――――
━━━
━━


湯浴みを終え布団に潜り込んだ顔がニヤける


沖田「廊下で俺を引き剥がさなかったし、目立った拒否反応も無かった…」



口元が弛む


沖田「積極的な舌技まで披露してもらえたし、コリャ期待してもイイって事ですかィ?」


そう呟いた俺を見たアンタ


困惑を宿し 泳ぐ眼
引き結んだ唇


笑けて来らァ

その面 拝めただけでと良しとしようか


さて 明日はどうやってからかってやろうか


そんな事考えて満足げに俺は布団の中、目を閉じた


END


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