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☆銀魂の小説(真選組/長編)
地味な傷1/山崎
メディア等には出していない、真選組の女性隊長
それが私、 仁和である


余りおおっぴらにして テロや標的の的にされかねないし
女性なので、と皆が気を遣ってくれていたりする


それが心苦しくもあり、個人的対策として
外出や遠出の際には、女中や掃除婦、出入りの業者に扮したりすることもある


コスプレ気分は楽しいけれど…攘夷浪士達に軽くバレてたりするからあんまり意味無いんじゃないかな、なんて
少し疑問だけど


さて そんな今日はまったり見廻りの日
ジミーとだから 弛くプラプラ漂うみたいに団子屋に腰を据える私はカモフラージュの作業着に身を包んでいる

妙な組み合わせに見えてしまうだろうか…いや、大丈夫、団子屋だし、大丈夫


『フフフ これが新作のショコラ団子かぁ』


山崎「仁和隊長…それ食べたらちゃんとまじめに廻りましょうね」


『私はいつもまじめだよ』


山崎「まじめにサボってるんじゃあ…」


『うるさい』


山崎「ふご!」


食べかけのショコラ団子をジミーの口に押し込めて歩き出す


山崎「待っへ!待っへくらはいよ…オェッッ」


『ばっちいなぁ』


山崎「あんたが押し込めるからだろ!」


『そんなんだからたまさんとウマい事いかないんだよ』


山崎「たまさん関係無いだろぉぉぉぉ」


こんなやり取りも慣れてきた午後
柔らかな日差しの中 ジミーの前髪が揺れる


ちょっとだけヘラッと口元が緩み、笑ってしまうのは 言葉に出来ないこの気持ちのせい


太陽の中でキラキラ ユラユラ
その鬱陶しい前髪が揺れる度 この気持ちもグラグラ

ああ もう
全部が気だるいなぁ…

そんな微睡む空気の中 目を遊ばせて少し歩いた先、人混みに紛れて不穏な空気を纏った数人を捕らえた

同時にジミーの目の奥も鈍く光り、声を密めた


山崎「あれは…指名手配中の…」


『応援呼ぶ?』


山崎「あまり時間が無いな、副長にメールして 無線で軽く言伝てておいてくれないか」


そう言うと ササッと物陰に隠れ 瞬く間に変装仕様に着替えが完了した彼


山崎「少し後ろのほうから俺の後をついてきてくれていいから」


そう小声が響くと、彼は韋駄天の様に指名手配犯を追って行った

ああ、あんな横顔を見るとホントに胸がざわつく

私が好きになってしまった横顔


━━━━━━
━━━━━
━━━━


さて、連絡係を済ませ ジミーの後を追うとセオリー通りの廃ビルにたどり着いた

既に様子を伺い、身を小さくしている彼の隣にそっと並ぶ


『あれが奴らの打ち合わせ場所?』


山崎「みたいだ、俺はこれから建物に侵入する
見張りが居るから 一瞬でいい、引き付けておいて欲しいんだ」


『えっ また掃除業者のフリとかすんの?』


山崎「だめ?」


『かよわい女子にそんなことばっかさせて…なんか美味しいモノよこせよ』


山崎「(今日おまえ全然働いてねぇだろ)」


『何か言った?』


山崎「何か聞こえた?」


『仕方ない』


出来るだけ自然な足取りで近づき、柄の悪そうな見張りの男に声をかける


『すみません、この辺に大江戸ナントカビルってありませんか?』


見張り1「ああ?」


見張り2「あっちじゃね?聞いたことあるぞ、そのタバコ屋曲がって…」


この隙があればジミーは上手く忍び込めただろう

案外普通に答えてくれた方にぺこりと礼をして去ろうとした時


見張り1「おい どうしてわざわざ俺達に道を聞いた?」


私の足が鈍く動きを止める


見張り1「表の通りに出れば人の良さそうな通行人なんざ居るだろ、こんな日の翳った場所のむさ苦しい男二人に…わざわざ、若い姉ちゃんがヨォ?」


見張り2「…」


『あれスミマセン、あたしゃちょいと目が悪いモンで お宅らの人相までは分かりませんでしたよ…』


思ったよりちょっと賢いみたい

下手な言い訳を溢し、そのまま振り返らずに早足でスタスタと先を急ぐが…
あ、ダメだ
追っかけて来る…

バレた。


こうなったら全速力で走るしかない

私の脚力なんてすぐさま追い付かれちゃうだろうけど


━━━
━━



人の多い通りに出たは良いが、追手との距離は縮まる

そろそろ声を張り上げ助けを求めようとした時 見慣れた制服が 視界に現れた


しめた!
向こうから歩いて来るのは副長だ
ジミーの応援だろう、人数が多い


それを目視した瞬間だった

ガシッ、と首を捕まれ 私の動きが止められてしまったのだ


見張り2「さぁ、観念し…」『お巡りさーーーーん』


見張り「げ」


高い声をありったけ 副長の集団にぶつける


この流れで あくまでも副長は、通行人に助けを求められたお巡りさんの体で接してくれる

さすがだよ フォロ方さん


土方「…!どうした!」


『こ、このオジサン変なんです』


スパーン


土方「そうじゃねぇだろ!志村かおまえは!」


小気味良くハリセンと副長の突っ込みが響き、見張り達は御用となった


土方「ったく…女隊士がいるってバレちまうだろーが」


『えへへ』


土方「俺の気遣いを踏みにじりやがって」


『えへへ』


リアクションはオーバーだけど 声は小さめに叱ってくれる

なんだかんだ気を遣ってくれるフォロ方さん

こんな人が恋人だったら安心感あるんだろうかな


そうぼんやり考えていた

なんでも恋愛に結びつけるのはこの陽気のせいだろうか


その時、御用となった見張りの携帯が鳴った


土方「出ろ」


見張り2「チッ…」ピッ「どうした」


電話の向こうから 低い男の声が 少し慌てた様子で何かを伝えた


電話を切らせた事を確認すると副長は声を苛立たせた

土方「クソ…とりあえずおまえら、コイツらを連行しろ」


真選組隊士「はい!ほら行くぞ!」


『副長…何があったん…』


土方「山崎が捕まった」



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あきゅろす。
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