[携帯モード] [URL送信]

☆銀魂の小説(真選組/長編)
地味な香り2
クラブハウスの出入り口は狭いので天井裏に潜む事にした


数十人程だろうか、人が集まってきた
比較的若くガラの悪そうな男女だ


天人「お集まり頂きましてありがとうございます、今日は楽しんで行って下さい」


司会の様な風体で軽く挨拶をする天人

潜む私達は身動ぎ 囁く


『何が始まるの?』ヒソ

「うん…なんだろう」ヒソ


天人の二人が会場内に設置された香炉に火を灯していく
薄く色付いた煙が漂っていく


「…香?あれは…」


空間に充満していく香り、下の集団は腑抜けた顔になっていく


『…なんか…あの香、ヤバいんじゃ…ジミー、嗅いじゃダメだね。鼻塞いで…』


「スハースハー」


『ギャー吸ってるぅぅぅ!』


「仁和…」


『な何?大丈夫?』


彼を心配し 顔を覗き込むが、なんとも真剣な眼差しをしていたのでたじろぐ

だって、彼は私の手を取り囁いたんだもん


「好きだよ」


『はぁ!?』


耳と目を疑った
今 私は夢でも見ているんだろうか?

いやまて、
この流れはおかしいだろ…
まさか、この香!?と、

眼下の集団に目をやり更に飛び上がった


くんずほぐれつ、お互いの身体を貪り合う男女の情景が広がっていた


なんと、所謂乱交パーティーじゃないか


マズイ
脱出しなければ…

ここの現場はどうしよう
あの香の解毒は…

もう頭はぐるぐる回る


なのに絡み付いてくる想い人


「…仁和、ねぇねぇ…好きだよ」


『あああぁぁぁぁぁぁもおおおぉぉぉぉぉー』


天人「誰だ!」


おっと
騒いでしまったもんね…そらバレるか

敵は少数だがなるべく大騒ぎしたくない
この場には2、3人の天人が居る


こうなったら
敵の警戒心を最大限に下げる能力…今こそ使うしかない!


『エイエーイ!』


評判の悪いこの呪文(?)を唱えると
天人の目付きが緩まる


『チューチューぼくはネズミだチュー』


天人「なんだネズミ君かぁ」


『ねぇねぇ天人さん、ここはどーゆー施設なの?』


天人「開発した新薬を 麻薬常習や犯罪者の地球人に試す所だよ」


『へ、へぇ新薬ってそのお香の事?』(とんでもねぇ所に潜り込んじゃったな)



天人「そうだよ 天人用の風邪薬を作ってたら地球人には惚れ薬効果のあるお香になったんだ」


『惚れ薬…みんな乱交してるけど?効果はどれくらい続くの?副作用は?』


天人「惚れ薬には多少の催淫効果もあるからねぇ
効果は2、3日じゃないかな?
副作用は特に無いと思うけど、性欲を発散させないと効果は抜け切らないかも知れないなぁ」


『うお…天人さんは…もしかして春雨なの?』


天人「うん そうだよ」


『うお…今から洗いざらいを真選組にぶちまけて ゆっくり休暇を取ったらどうかな?疲れが取れるよ』


天人「うーん ネズミ君がそう言うならそれもいいかもねぇ
オイ おまえら、ちょっくら真選組ん所に顔出すぞ」


天人B「おう、いいねぇ 行くか」


『ここの性に乱れた地球人達は性欲を発散させたら正気に戻るの?』


天人「ああ 戻るよ、じゃあ行ってきます」ぞろぞろ


『…フゥ』


山崎「仁和、なんだか疲れてるよ 大丈夫?」


『おまえが無用心でバカだからだよ』


山崎「えー せっかく今の会話、録音したのに」


『抜け目無いんだか抜けてんだかわかんないね』


山崎「いや 俺自身はヌキたいんだけど」


げしげし


山崎「あ、痛い 痛い やめて」


━━━
━━


―――屯所―――


土方「で、ザキがその香の効果でおまえに盛っている、と」


『そ そーゆー言い方はキモいから辞めて欲しいな、副長』


近藤「まぁまぁ、今回は指名手配犯が多数取り押さえられたぞ
いやー はっはっは おまえら二人が組んだらたまに確変が起きるから凄いよなー
これからも頼むぞー」


沖田「そうですねぇ、盛ったザキは一味違いやさァ

それより ザキとは一発ヤッちまやぁ正気に戻るんでしょう?
減るモンじゃねぇしここは一発…」


『減るわ!』


沖田「減るのは男だけでしょう、女が何を減らすってんでィ」


『減るわ…時価とか尊厳とか』


山崎「もうみんな辞めて下さい
経過はどうであれ 俺は本気で仁和が好きです
それはいけない事ですか?
下品な誹謗中傷は仁和が傷付きます、彼女は悪くない」


『…嬉しいけどこんなのジミーじゃない』シクシク


土方「あーもー…今日は二人共上がっていいぞ、特に山崎がそんなんじゃ仕事にならなそうだ」


面倒臭そうな副長を横目に 部屋を出る


―俺は本気で仁和が好き―


そんなセリフをあんな顔で 大好きな貴方に言われたら、もう…もう…

胸が鎮まらない


折角今まで築いてきた平静が台無しだ


惚れ薬のせいだって解ってる


だからってこの勢いに負けて彼とくっついたとしても、
性欲が治まれば元通りの彼に戻る…


戻った時に…やはり たまさんの事とか忘れられないでいるのかな、
捨てられちゃうかな…?


それが怖い、悲しい


複雑だけど、距離を置こう…


攻められたら うっかり着いて行っちゃいそうだ
あんな目をされたら
自制心に自信無いよ


かぶりを振って顔の火照りを取ろうと歩くスピードを早める
が…


『…なんで…ついてくんの…』


山崎「仕事も済んだし、一休みしたいなーって。お茶飲まない?」


『いや私は』


山崎「茶菓子も用意してあるよ」


『…縁側なら付き合ってあげる』


仁王立ちでお菓子アピールしてくるジミーに負けてしまった


━━━
━━



――縁側――


菓子に釣られるなんてアホだけど
動いたし能力を使ってお腹が減ってしまったのだ


密室で二人きりにならなければ、理性もあるさ
可笑しな事にはならないだろう


「はい、これでも摘まみましょう」


『わ!凄い!可愛いクッキー…なんでジミーがこんなお菓子持ってたの?買ったの??』


「うん、たまには気分を変えたかったんだ」


その明るい笑顔には出さないけれど
きっとこれはたまさんの為に買ったものなんじゃないかと思った


流行りの店、ピンクのリボン、ロボット型のクッキー…


彼女は料理をする時くらいしか、人と同じ食べ物を口に入れないから…


捨てるに忍びなくて、なんとなく賞味期限が来るまで持ってて、丁度よく私が居るから…

みたいな


監察で培ってきた深読みのスキルが詮索を止めない


複雑な思いが交差する


「うん、美味しいな 仁和の口に合うかわからないけど…どう?」


『…美味しい このネジ型のサクサク!』


美味しくない訳がない

想い人がくれた、想い人と一緒に食べる甘い甘い茶菓子

想い人が、想い人と食べようと思ってたクッキーなのに………

そう考えると
複雑だった


「ははは、そんなとこに食べ溢し」


山崎の指が仁和の口元の欠片を摘まみ、パクリと食べてしまう


なんか、なんなの…
コイツ わかってないなぁ

もう言葉が出て来なくて
イラついてムカついて

涙線が一雫を運んでくる気配を感じた


『…たまさんとは上手くいってるの?』


私も私
咄嗟に出てきちゃった言葉がこれだ
もうヤダ


山崎「仁和…俺は」


『たまさんの事、あんなに好きだったよね
…もう いいの?』


山崎「仁和」


『天人の香に充てられたくらいで、ジミーの想いは揺らぐの?そんなに軟弱な想いだったの…』


言い終わる前に
山崎の長い腕に

捕らえられてしまっていた


山崎「うん、俺は卑怯だね」


彼の表情は見えない


「好きだったよ、たまさんの事
でもね 見ての通り 彼女は俺の事目もくれない
それどころか立場が違い過ぎる
どこかで諦めはついていたさ」


『私、たまさんの代わりかよ』


「仁和」


暖かな腕の檻から逃れようと顔を上げる


『馬鹿!チビ!あんパン!』


ちゃんとした言葉は出て来ないし
話し合いも難しそうだ

子供みたいな悪態をついて 走り去ってしまった


「…俺、馬鹿であんパンだけど おまえよりはチビじゃねーよ…」


ジミーの突っ込みが空しく夕焼けに吸い込まれていった




[*前へ][次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!