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☆銀魂の小説(真選組/長編)
地味な香り1/山崎
「仁和は監察組に入ってくれ。人手不足だし山崎が指示をくれるから大丈夫だろう」


そう局長に言われて幾日

まぁ当然の配慮だと思う


人の警戒心を弛めたり、満腹感で満たしたり、閉塞感で疲れさせたり出来る能力…

これらを使える事を現時点で明るみにしているが
使い所を選ぶ能力なので 諜報機関のほうが適しているだろう


ううむ、そろそろ必殺技でも披露してやろうか

いやいや 別に見くびられているとか そーいう訳では無いだろうから大人しくしておくべきか…
奥の手はピンチ時にひけらかす方がカッコイイよね

あれ?この台詞なんか中二病みたいだね
いけないいけない


とにかく、私には本格的な張り込みやスパイ活動はまだ任されておらず
先輩である この地味な年上に指示を仰いでいるのだ


今回、彼と変装して指名手配の犯人を尾行に行く事が決まった


犯人もカップルなので
こちらも地味なカップルに化けて 自然にデートスポットや観光地を尾行出来る訳だ

疑似デートである


━━━
━━


━━━
任務中
━━━


『カフェかぁ…ベタっすね』


「まぁデートのランチタイムだからね」


私達は犯人カップルの死角に座り、デートらしくオーダーする


『パフェで』


「あんパンランチセットで」


『そんなけったいなセットがあるんですか…ココけったいなカッフェーですね』


「仁和こそ しっかり食べたほうが良いんじゃない?パフェって…万事屋の旦那みたい」


『分かってないなぁ、オンナの子は砂糖やマシュマロで出来てるんだよ
糖分は補給しなきゃいけないモンなんだよ』


「…語り口まで旦那に似てるよ」


『死んだフィッシュアイズと一緒にしないでよ
そんなんだからたまさんと上手くやれないんだよ』


「何 中途半端に横文字使って旦那を形容してるんだよ!カッコ良くないからね!
てゆーか今関係ないだろ!たまさんは!!くそー!」


そんな会話をしながら、犯人カップルもしっかりマークして良いテンポで皿を空にする


このジミーに恋をしたのはいつの日か


優秀な監察の彼はもうずっとスナックお登勢のたまさんに恋をしているとか


伝えたい
伝えられない

凄くもどかしい葛藤

失恋しちゃうかな?
それはヤダなぁ

社内だから気まずいし切ないし


そんで、自分の気持ちも律することが出来ないようじゃ監察失格だって鬼の副長に怒られそう


部署を替えられて きっと会える時間も減っちゃったりして


そんなの…ヤダな


もうちょっとこっそり この気持ちを閉じ込めて措こうかな、なんて


…いつも通り、
そんな気持ちを ギュッと握るスプーンに込めてクリームを吸い込む


「…やっぱ 仁和隊長、万事屋の旦那の事 好きなんじゃない?」


『始まった んなわけ無いでしょ』


ジミーは百戦錬磨だ

話す時、目を見る時、接する態度等を
上手に隠せる自信なんて無いから


知ってる誰かの 振る舞いを真似して、演じて、皮を被って、
誤魔化してるの


新八君みたいに従順で 神楽ちゃんみたいに天真爛漫で 銀さんみたいにフラフラしたり

そうだな、銀さんくらいが丁度良いの
あんな男だし、覇気が無い人だから気負わないし


それにたまさんの近くに居る人達だし…
たまさんワードにも過剰に反応しないように自己暗示が掛けられるの


弱くて姑息な私


屯所では皆はザキって呼ぶけど
神楽ちゃんの真似して私だけジミーで呼べる、屯所内での周囲との差別化、狙ってみたりして


━━━


『そもそも銀さんなんてちゃらんぽらんだしヤダよ』


「でも主役だけあってモテるよね」


ジミーの目の奥が鈍く光った気がした

こんな世間話にも 私の機微を読み取ろうとしているのかな
難儀な職業病だね


『ね、羨ましい』


「仁和もモテるじゃない」


『屯所でのこと?女旱りの空間だから厳密にはモテでは無い、
盛られてるんだよ』


「盛られ…発情期の犬じゃないんだから」


『犬か…犬系男子なら可愛いのにね、屯所の面々ときたらチンパンジーやゴリラばっか』


「犬系男子って…沖田隊長とか?」


『あんなドSやだ』


「どんな犬系なら良いんだよ」


『んー…普通で良いから優しいとかかな』


「…月並みだなぁ」


そう言って 少し戸惑ったように笑う

《普通》も《優しい》もジミーを意識したワード


私を探ろうとしたジミーへのジャブも兼ねた
気付いて、気付かないでの境目の オールマイティーな答え

見え隠れ、見え隠れ


だけどこうすれば 達者で臆病な貴方は考えちゃうのがイヤになるから
追い掛けて来ないでしょ


この切ないカケヒキは モヤモヤした口内で
アイスを瞬時に蕩かす沈黙と熱に変わる


「あ 男が動いた…トイレみたいだな、俺も行って来る」


『はーい』


すぐ動けるよう この間に支払いを済ませておく

ジミーも抜け目無く 女にぶつかった振りで盗聴器を仕込んで移動を始める


「どうやら今日は取引きがあるらしい、この先のクラブハウスで天人と麻薬のやり取りがあるって
仁和、大丈夫??
先に副長に報告に戻ってても良いんだよ?」


気遣いは嬉しいが 私を捜査から外すって事は、少し危険な仕事になるのかも知れない


頼り無いもんな…私

真選組とは言え やはり女の身を案じて貰えるのは頼もしくもあるが
心苦しいものである


発したのは意気消沈気味の声になってしまったと思う


『大丈夫だよ こっちも二人組のほうが動き易いんだから行くよ』


そう返してビル内に潜入した



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あきゅろす。
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