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☆銀魂の小説(真選組/長編)
2―おにぎりの香り
「で…近藤さんがその香の欠片を口にした、と」


『はい…そんな感じです本当にごめんなさい』


冷ややかな目を向ける鬼の副長が続ける
ひぃ…
汗が止まらないよ


土方「その香の効果はいつまで続くんだ?」


『…さっき吉原の百華の人に聞いたけど、前例が無いから分からないそうです…
一週間かも知れないし一月かも知れないと』


土方「まぁ…命に別状が無いから良いものの…ったく」


近藤「トシ、そう言うな
よく解らんが仁和のおかげで俺は最高の気分なんだ
お妙さんの事を想っていた時は言葉の暴力、精神的暴力、ただの暴力に枕が血や○○(ピー)で濡れない夜はなかった

しかし今は こうして側に居てくれる愛しい仁和の存在の大きさを安らぎを感じているんだ」


『…それって別にお妙さんを想ったままでも 幸せじゃないですか』ジワリ


土方「冷静になれ、《血》ってゆー物騒なワードが潜んでいるぞ」



近藤「どうして泣くんだ仁和、お腹でも空いたのか?」


土方「とにかく…香の効果が切れるまでおまえは近藤さんのサポートに回れ
仕事も…極力プライベートもだ」


―――――
━━



仕事でも、近藤さんと絡む時間が増えるのはとてつもなく嬉しい


けど
薬の力で、なんて…
贅沢かもしれないけど切ない


本当の彼はお妙さんがずっと好きで追いかけてた

近藤さんの気持ちをねじ曲げてまで私に恋をして欲しい訳じゃない


あの香を口にして、最初に見たのが私じゃなくて 別の人だったら
その別の人を追いかけていたんだろうな…

複雑過ぎる


私は…ただ、いつもの貴方が欲しいの


クズな話、
もしも 貴方の心の愛の座を 永遠に占められるなら このまま過ごすのもアリなのかも知れない

でも あの香にそんな効力無さそうだし


いつか確実に醒めてしまう夢なんて、怖い
醒めてしまった時を思えば耐えられない


終わりのある愛の行方なんて 最初からご臨終じゃない
だから私は 貴方を正気に戻さなきゃいけないの


はぁ…とんでもない不注意をやらかしたもんだ


自室で支度しながら 頭を駆け巡るモヤモヤ
袂を掠めた指は自分でも驚く位 冷たかった


―――――
━━



近藤「仁和ー!一緒に夕食食べよう」


『え ええ』


モグモグ
ぴっとり


って、此所 食堂なのに 私の隣に来て…私にもたれかかって来るよ
こんなの始めてでドキドキ…
じゃなくて!!
距離感おかしい…
重いなぁ、狭いなぁ


咀嚼、苦しくないのかな
私は圧迫感が苦しいよ


うーん 冷静になってみると、やっぱドキドキしないような
いっそキモいような


ハッ…
どうしよう…他の隊士達がびっくりしてるし…

そらな
私だって他の隊士の立場だったらびっくりするわ

あー…ほんとに明日からどうしようどうしよう


恥ずかしさも手伝い、御飯をかっ込んであたふたしてしまう


━━━
━━


――近藤の部屋――


近藤「なぁなぁ、そろそろ眠くない??」


『眠くないです…人の目があるからわざわざ此所にお話をしに来たんです…勘違いしないで下さい』プイッ


近藤「えーっ 照れなくていいのにぃ…お話って何?プロポーズ?」


『ちちち…違います、何言ってるんですか 今後の方針とか…です』


近藤「今後?順当にお付き合いを重ねていってねぇー、ウフフ…まーそーゆー訳でオジサン一緒に寝てくれるのかと思っちゃったじゃん、寂しーよぉぉぉ」


『なんで私が一緒に寝ないといけないんですか』


近藤「だって俺達、トシも公認の仲だしぃ〜」くねくね


『いやあの私達…お付き合いもしてる訳じゃないでしょうが』


近藤「ああ…すまん、
いつも一緒にいる仁和だから 同じ時間を過ごす事のが当たり前になってたんだな
言葉が遅れてしまって申し訳ない」


「付き合ってください!」


夢にまで見ていたその言葉
ずっと切なる願いであり 望んでいたはずなのに


嬉しい気持ちとは 別の涙が滲んで溺れそうになった


近藤「えっ…仁和、嬉し涙が!」


『ちげーよ!そうじゃなくて…そうじゃなくて』


込み上げてくる涙を払い、混乱する頭で 必死に言葉を手繰る


『近藤さんは…御不調なんです
それで私が看病することになったんです
今の近藤さんは悪い熱に浮かされているんです

私を見てムラムラしちゃったりしたとしても
気の迷いなんですよ』


近藤「…仁和」


『ずっと…ずっとお妙さんの事を追いかけていたじゃないですか
そんなに簡単に諦めちゃうんですか?』


近藤「そうだな仁和…確かに俺は今朝までお妙さんのボディーガードをしていた
しかし おにぎりを食べた辺りかな、俺の隣にいるのは絶世の美女だった」


『』


近藤「いつも俺を傍らでサポートしてくれている仲間だと思ってた

近くに居すぎて、恋という感覚が鈍くなっていたのかもしれん

そうでなくても俺は鈍いってみんなに笑われてるもんな」


ハハハと 軽快に笑う近藤さんの顔を噛みしめる


近藤「やっと…気付けたんだ、この恋に。
大事にするから…
仁和じゃないとダメなんだ
おまえ以外、想ってはいない
信じて欲しい」


―何も言えなくなってしまった
今…この人に何を言ってもダメなんだろう
きっと 香の魔力が冷えるまで…この優しい、愛しい人に私が出来ることは…―


『わかりました…じゃ もし 近藤さん、貴方がこの先 時間が経っても私の事を好きで居続けられるなら…その時、ちゃんとお付き合いしましょ』


―開き直る事なのかも知れない―


近藤「えっ 本当に!?ホントにホント?」


『ちゃんと公私は弁えて下さいね、風紀を乱さないようにって副長に…わっ』


言い終わる前に抱きしめられる


近藤「うん…きっと大丈夫。嬉し過ぎて皆に自慢したくなっちゃうかも知れないけど」


耳元に低い声が掛かる
ずっと欲しかった、でも叶うことの無い彼の温もり…

心も身体も芯から蕩けそうだ


近藤「おまえ…気付いてないかも知れないけど 隊士達の間では人気あるんだからね
やっぱ心配だから自慢しちゃおうかな…」


うっとりと恥じらいを浮かべつつ慈しむ様な目


こんな香…麻薬だ
毒にしかならない

コレを頼って仕舞う人の気持ちが理解できる


夢にまで見た、彼との睦み合い

穢らわしい私の想い
律する事が出来るだろうか


彼の背中に手を回して 期間限定の愛を抱きしめる

そんな私の顔はこの 鏡にどう映っているだろう


近藤「さて 恋仲になれたことだしオフトゥンは一緒だよねぇ??」


『まぁ段階と空気を読めよ、ゴリラ』


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