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☆銀魂の小説(真選組/長編)
2―ジョロキアの傷
響く轟音

砕けるカラオケの個室


「かーつらァァァ!」


叫ぶ聞き覚えのある声
沖田である


桂「むっ…嗅ぎ付けて来たか、仁和殿、また近い内にお会い出来ると良いな」


コント顔負けの黒焦げ頭になった万事屋ファミリーに目もくれず一陣の風になった、逃げの小太郎

その影を数秒後に追いかけて来たのは聞き覚えのある やる気の無い声だった


沖田「こんな所に潜伏してやがったか!大人しくお縄を頂戴しろィ!」


神楽「おい ドS馬鹿 クソバズーカーが当たってんだよ」ケホッ


沖田「おう馬鹿チャイナ、挨拶代わりだ とっときな」


いがみ合う二人の脇から数人の隊志達が桂を追って走り抜ける


沖田「仁和、おまえも手伝え」


『私非番です』


沖田「緊急事態だろーがィ」


『私服だし 取り込み中だし』


沖田「残業代もでますぜィ」


『銀さん、神楽ちゃん、新八君、今日はありがとう!楽しかった!また遊ぼうね!』


銀時「おー気をつけてなー」

神楽「仁和ーガンバってネー」

新八「お疲れ様ですー」



万事屋に代金を支払ったから私の懐はそこそこ寒い

背に腹は代えられない、稼がなきゃ

彼らも許してくれるだろう
てゆーかもっと遊んでたかった!モウ!


私は沖田に続いて走り出す


━━
━━
━━


沖田「しかし アンタが万事屋の連中とつるんでるなんて意外でさァ」


『そうですか?神楽ちゃんはイイコだし新八君も礼儀正しいし銀さんは面白いですよ』


沖田「そんなケバいナリまでして、気合い入れてたのに申し訳ないですねィ」


『オフの日くらい好きなカッコしたっていーじゃん 、おまえなんか煮しめみたいな色の着流ししか着ないくせに』


沖田「生憎 俺ァモトが良いんで何着ても様になるから あれぐれェが丁度良いんでィ」


『あっそ、羨ましいことですなぁプークス』


沖田「なんでぇプークスってのは」


『私の馴染みの囃子言葉です
ってゆーか沖田隊長…』



見渡すと、人気の無い道順を辿り


『此所、何処です?』


のそりのそりと姿を現した悪人面の浪人達に、ぐるりを囲まれていた


沖田「イヤァ参った参った、話に夢中になってると誘い込まれちまったみたいですねィ」


浪人「真選組の沖田だな…こんなスケ連れでイイ気なモンだねぇ」


『ねぇねぇもしかして…真選組カウントされてないの?私』ボソ


沖田「都合がいいや、まだ面が知れてねーんだろ
どうせ大した戦力にはならねぇんだ
逃げる振りして援軍を呼んで来なせぇ」ボソ


『アラッッ戦力外通告カッチーン』


沖田「お?踊れんのかィ?仁和隊長」


『誰が踊るかドS馬ー鹿!!援軍呼んでくるから待ってろーい』ぴゅー


沖田「…」
浪人達「…」

軽やかに風を起こし、私は走り去った


沖田「やれやれ…ホントにドロンかよ…ちょっとは実力を見せてくれると思ったんだがなァ」


浪人「フン、色男が
女ァ逃がしてテメェだけ犠牲になろうってか…」


浪人「甘ぇなぁ」


浪人「俺達が女も逃がしてやるような優しい攘夷志士様にでも見えたのかぁ?」



沖田「…!お前ら…桂の仲間じゃねぇな」



浪人「なぁに 桂の通り道にちょっと、たまたま、都合良く、通り掛かった、だけよ」ニヤッ



浪人は厭らしい笑いを浮かべて刀を構え、
沖田をジリジリと囲んで往く



腕に覚えのありそうな輩が数人、雑魚が数人…
沖田に分が悪いわけでもないが良いわけでも無さそうだ


どう 切り込むか期を伺っているが
少し離れた所で声がした


『キャアァ!』


高い叫び声に振り返る


沖田「仁和!」


姿は見えない、しかしもう一度名を呼ぶ


浪人「へっへっ…なかなか可愛らしい娘っこだったよな…女郎屋にでも高く売れりゃ…」


『…ァァァァァァ!』
男「ヒィィィ!」
男「ぎゃーっ」


少し離れた所でまた響く声


その場に居た全員が 首を向け
見通しの悪い、その路地に声の主を探すと


ズルりズルり
妙な音がする


気だるそうに浪人を引きずり、
その世界観に習ったミニの着物、ニーハイ
しかし漂うのは異質な殺気だった


そして微かに嗤う


『フヒヒ、そういや総悟って呼んで良いんでしたっけ…』



浪人「え?あれ?」
浪人「あいつら何で伸びて…??」
ざわざわ


華奢な女の身体が 男二人を引きずる姿に違和感を感じ、攘夷志士達に動揺が広がる


『実力、だぁ?魅せてあげるよ 総悟。ちなみに、あっち側を囲んでた集団は片付けといたから。ひれ伏しなさい、ドS』


『そしてゴロツキ共よく聞けぇー
私こそは真選組との夢のコラボレーション実現!!…新世紀マジカルワープエンジェル・仁和アラモード!!』
ビシー


一同「…………」


沖田「真選組の名を掲げて 恥ずかっっしい名乗りを挙げないで下せぇ、バカメス」ヒソッ


『だって私、顔バレしてないんだから何て名乗ったっていーじゃん クソどS』ヒソヒソ


ギャーギャー


浪人「なんだコイツらムカつく…」
浪人「女に関してはなんだか痛てぇぞ…構うか
やっちまぇ!」


ワッと
浪人達は襲い掛かってきた


サッと身を翻す沖田はものともせず攻撃をかわし
彼の剣が空を舞う


ドッと声も無く倒れるのは三人だった


浪人「クソッ…女を狙えぇぇ」


沖田には敵わない実力差を感じて、標的を女に向ける…
なんて月並みなんだろう
そんなことを考えて、私も叫んだ


「エイエーイ!」


沖田「は…?」

浪人「ぶははは なんだその掛け声 何も起こらんでは…」


浪人A「ヒィィィ」
浪人B「ぎゃあぁぁぁ」
浪人C「うっ…うわぁぁぁぁ」


倒れこむ数人を見て不安に一気にどよめく周囲


『お前らの閉塞感をMAXにしてやったのよ…ハハハ』


初めて私の能力を間近で見て驚く沖田を尻目に
私の卑劣な蹴りが的確に浪人達の急所を捕らえる


「どう??鬱でしょ!」ガッゴッバキッ


浪人ABC「うぇぇぇ」


浪人D「クソッ何をした!てめぇ伴天連の妖術使いか!?」


浪人Dが刀を投げつける

その姿は私の死角にあったので反応に遅れてしまった


『しまっ…た……?』


目を細めて身構え覚悟をした

だがこの身体に痛みは無い


沖田「クッ…」


『総悟!!なんで!』


沖田が自分を庇い、ダメージを受けたのだと知る



沖田「あんた…油断しすぎだろ…スキだらけでィ」


投げつけられた短刀で腕を切られたか、とにかく出血している


『そんな…あんた、女を庇うタマじゃないでしょ』


自分を庇って人が切られるなんて
仕事柄 覚悟こそしていたものの やはり実際に起こってしまうとショックは隠せない


浪人「よっしゃ よくやった」
浪人「へっザマー見ろ、天人から譲り受けた妖刀だぜぇぇぇ、キくだろぉが」
浪人「オラ 覚悟しろよォ」



『許さない…』


沖田を抱え、更に強い特殊能力を使う為、
構えて そう呟いた時


天から黒い影が舞い降りた


優雅なステップ
軽やかな太刀筋


ばったばったと
「うっ」「ぐぉぉ」


浪人達に膝を点かせていく


「おまえは…桂」「クソッ」


桂「ヅラじゃない、桂だ」


『誰もヅラとか言ってないよ
なんで!!逃げたんじゃないの!?』


桂「いやいや仁和殿、まさか貴殿が真選組に雇われた
新世紀マジカルワープエンジェル・仁和アラモード だったとは」


『なんでワンブレスで言えるんだよ、結構適当に考えた魔女っこネームをよぉ
好きなの、魔女っこ?信じたの?魔女っこ好きなの?』


桂「そのマジカル…ゴクリ
これは是非とも、ウチの人材に欲しい所だ
引き抜きには応じる予定はお有りかな?」


『ハハハ…真選組には恩があるんでね、今んとこ考えて無いよ
てか魔法少女そんなに好きかよ…この変態』


桂「変態じゃない、桂だ」クワッ


『紛れもなく変態だよ…でも ありがとう』


桂「一つ貸しができたな」


クスリと笑って 貴公子は去って行った


『だとよ、総悟 貸し、払えよ』


私の肩の上に凭れた沖田は薄く目を開く


「なんでぇ 桂と仲良しのおまえが払え」


『仲良…!?やめてよ!勘違いしないでよ??
私スパイとかじゃないからね!今日初めてアイツに会ったからね!』


変な誤解を招いては堪らない、といった調子で慌てる


「気に入られてますねィ スカウトですかい…何やらかしたんですかァ?」


『何もしてないし…勘弁してよ
私、真選組なんだけど』


沖田はフッと笑う


『まぁ、逆ハーレムはヒロインの宿命みたいなとこあるからね 詮方無いね』



沖田「あんたが肩肘張って気取ってる顔より
気ィ抜いて見せてるアホみてェな狸面の方が取っ付き易いんじゃないですかィ」


『…』


沖田「まぁ 男所帯で、女一匹と来ちゃあ、何か装ってたくなるキモチも解らなくもないですがねェ」


『野暮だね、総悟…』


沖田「へっ」


『女には色々あるんだよ』


沖田「違げぇ無ぇ」


『…でも、ありがとう』



到着したパトカーのサイレンに導かれ、そんな沖田の耳障りな台詞を噛み締める



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あきゅろす。
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