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ゾンゼロ長編
005

静かに、なめらかに放たれた白弧の一言で、栄華はとっさに表に出た───いや、気付いたら外に居た、と言う方が正しいだろうか。

栄華の瞳には勇ましい背中しか映らず、世界中のあらゆる音も二人の間だけは入ってこれないかのように静まっていた。


認識はしていたものの、いざ目の当たりにするとにわかに信じられるものではない。

死んだはずだったたくましいその姿は、やはりとてつもなく懐かしい瘴気を放っており、自分の予見が誤っていないことを語っていた。



「そうね、九浄クンだ」




動揺して動けずにいる栄華を、ゆっくりと振り返る。

ただまっすぐに天に伸びる角を携え、長い髪をうっとうしげに払う彼は───




「九浄君は」





キヨアミ





 だ 」



小さく呼んだ、栄華にしか聞こえない呟きだった。

いや、己れの心の声が、栄華の頭の中だけでこだましているだけなのかも知れないのだが。

しかしその刹那、二人の間にだけ流れていた沈黙は去り、あっという間に宿主の姿へと変わっていた。


「…浄阿弥」


もう一度だけ、今度ははっきりと口に出して、かの鬼の名を呼ぶ。

そして、貧弱な九浄の体を支えながらがなり立てる二匹に、わずかに潤んだ一瞥をくれて、店へと踵を返した。


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あきゅろす。
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