ゾンゼロ長編
001
ろくに休まずに、一気にここまで飛んできた。
昔馴染み…という一言では片付けられない輩。
とにかく急ぎだし、懐かしむ隙もなく、いろんな意味で形振り構っていられなかった。
とりあえず窓を叩きまくる。
「もしもーし、ちょっと開けてくれません?耳に入れときたいことが…おーい!もしもしぃー?」
「だぁーーーーっるっせーな!!誰だよ窓から入ろうとしてる不逞のやか…ら…って」
「早よ開けんかカラス!」
「なんですかコノヤロー!俺にゃ『弁天』って名前があんだよ!!食うぞ!!」
ここ『居酒屋弁天』が2階にあるにも関わらず窓を叩けるということに対して、なにも突っ込まずに捲し立てるところは、なんだか彼らしい。
「下ネタですかこのアマー!」
「俺ァ男だボケーー!!!」
「こっちかて女や!しかも超一級のな!!先にヤロー言うたんはアンタや!!早よ開けぇカス!!」
「しまった…ってカラスからカスに降格か!?望むところだやってやらァ!!」
勢いよく窓を開けた弁天を無視して、栄華も素早く部屋に入った。
取りあえず息をするのに必死で、懐かしいにおいを頭の隅で感じながらも酸素を取り込んだ。
弁天も、ただならぬ様子に気づいたのか、二の句を継ぐのをやめて私の様子を見ている。
早く、…言葉、を。
息が上がって言葉が出せないけれど、やっとの思いでこう言ってやった。
「水、くれ!!!」
「はあ!?」
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