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ゾンゼロ長編
003



ふわりと手のひらに、クリアな風が吹いた。
瘴気に満ちたこの空間に、私は透明の風を呼び寄せた。
後ずさりを続けながら、その風を育てる。


キッと窮奇をにらみ、右手を握る。
おおきな敵の周りを、目くらましのように最速で飛び回ると、操る風は綱のように鋭く形を変え、窮奇に絡みついた。
身動きが取れずもがき出したようやな。
それを確認して―――勢いよく飛び立ち、綱を引く。
窮奇はバラバラに裂け、無惨な悲鳴をあげて崩れた。

それを見届けて、次は空中戦。
ぐんと高度を上げて、有翼の魔物を待ちかまえる。
高く飛んだ理由は、もちろん風を有利に使うためや。
昇る過程で風を生めるし、上空の方が風速もある。

魔物2匹は、どこか不自由そうに、不器用に飛んでいたため、待ち構える時間はだいぶ稼げた。

敵の姿が見え始める。
よくよく見ても、やはり今まで見たことのない部類の窮奇だという事がわかる。

十分に風を身に纏い、その力を利用して勢いよく降下。
すると、風の剣は見事に1匹の体にめり込み、右翼がもげた。

もともと飛ぶのに支障があるみたいやし、これでこいつは空には留まれない。
出血多量で倒れるのも時間の問題やな。
残るはあと1匹―――

そう思ったその数秒後、うちはうっすらと浮かべた余裕の笑みを、ひっこめた。



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