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佐助
「佐助―…あれ、いないのかな?」

はぐれた親を探すように、辺りを見回しながら歩くのは哀れで愛しい俺の子猫。



[指を絡めて、寄り添って]



「どしたの旦那」

「佐助!」


真田の旦那とは違って気づく気配を見せないのが面白くて観察していたけれど、そろそろそれにも飽きて声を掛ければ嬉しそうに振り返って。

ちょっと、俺の声真似した敵忍だったらどうすんの。



「…って旦那、得物は?」

「……陣、にある」

「……」

「……」

いくら戦が終わったからといって残党が残っていないとも限らないのに。
思わず溜め息を吐くとあからさまに目の前の小さな身体が跳ねた。


「…ごめん」


か細く絞り出された声。
さっきまでの元気は影をひそめ、肩を落とす姿に笑みが漏れる。
…可愛い。


「ま、いざとなったら助けてあげるよ」

「は?」

「危なくなったら助けてあげるって言ってんの。旦那は甘いからすぐに殺されちまうっしょ?」

「ダ、ダメだよ!だって佐助は幸村の忍だろ!?」

「あのね、俺様を何だと思ってるの?天下の猿飛佐助様よ。そこら辺の忍と一緒にしないでちょーだい」

「そう…?」

「そ。」

縋るような安心しているようなその表情が俺だけに見せるカオだってことを俺は知ってる。
大将にも真田の旦那にも見せない、見せられない弱い一面。

そんな表情が見たくて俺様は主でもないのに助けるなどと忍らしからぬ嘘を吐く。
でも、そんな嘘に騙されるキミが愛しくてたまらない。


(ヤレヤレ、忍の愛なんて真っ黒いものでしかないのにね。)



「ね、旦那。ここまで登っておいでよ」

「? うん」


俺様なんかに捕まった哀れで愛しい子猫。
近寄って来なければそのままにしておいてあげたのに。


指を絡めて、寄り添って
(好奇心は猫をも殺すってね)



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