DREAM
朝練(カイル)
朝です。
日の出を見ています。
早い話が、めっちゃ朝早いんです。
こっちの世界に来てから、早寝早起きの習慣がついたと思う。
そりゃ、夜になったら寝る以外に何にもすることないから当たり前の流れだけなんだけども。
そして今朝は、ストラを教えてもらうため、カイルと一緒に朝練だ。
ここの世界にいるとタフになる。
帝国軍とも対峙したし、でかいアリとも戦ったし、機界の防衛兵士やら鬼やら幽霊やら獣人やら、この島は敵のバリエーションは驚くほどに豊富。
精神的にも肉体的にも、心臓も肝臓もタフになりそうだ。(最後のは9割9分9厘、メイメイのため)
もう覚えられるならストラでも召喚術でも何でも覚えてやれーな精神だ。
(ストラを覚える動機の何割かは、二日酔いの治療だ、と言ったら笑い飛ばされる、ような気がする)
「いいか、ストラは気の流れを強くイメージするんだ。召喚術と一緒だな。
丹田に力を込めるようにゆっくりマナを集めろ!」
カイルは朝から稽古をする。何でも朝の澄んだ空気が良いとかどうとか。
俺はさっきまで眠かったのに、カイルの声で完全に目が覚めた。
カイルは朝からテンション高めだ。
だからこっちもテンション高く応戦する。
だって相手のテンション低いとやりにくいだろ? 相手に合わせなきゃいけないのかな、とかさ。
でも、丹田って、どこ。
「ストラは掌から放出するんだ。溜めたマナを自在に移動させるにはイメージトレーニングが必要不可欠だ!」
「へい、船長!」
すでに起きて、朝ご飯の支度をするために水を汲みに行くスカーレルが横を通る。
スカーレルの目は、何だか可哀想なものを見るような──見てはいけないものを見たような目で、こっちを見ていた。
(……どうしたんだろ)
「おいナナシ、やる気がないならやめるぞ?」
「そりゃ困る!ちゃんと真面目にやるから、船長!」
「船長って……あんなヤツの部下の真似なんかすんなって言ったろ…?」
「いや……、あれさ、一度聞いたらもう耳から離れなくて……」
あの暑苦しい(というよりすでに漫才)親分子分のやりとりは、本当にうつってしまう。
恐るべき感染力だ。
だから、カイルの体育会系の乗りに過敏に反応して、つい、出したくもないあの掛け声が出てしまうんだよ困ったことにさ!
「だあーー!もういいや、続き行くぞ、ナナシ!掌に熱を集めるイメージで、マナを血液に乗せて循環させるんだ!」
「へい、船長!」
「だーかーらー!」
「不可抗力だ、ジャキーニと子分たちに言ってくれー!」
「……あんなの覚えちゃダメだって言ったのに……」
ぽつりと呟いたスカーレルの声は、俺の耳に届くことなく、風に乗って消えた。
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