切っ掛けは…(FF零式・甘・エース)
出逢いは私が自分のチョコボを綺麗にしていたときだった。女の私より綺麗な顔立ちに髪。今思えば一目惚れだったんだろう。
彼は嬉しそうにチョコボを撫で続けている。候補生の彼のクラスはあの幻と言われた0組。
「君のチョコボは逃げないのか?」
「うん。なんか先祖に蒼龍の血筋がいるらしくって、モンスターやチョコボになつかれる体質。逃げていかないから、二匹しか育ててないんだ」
「……いつもチョコボ牧場に独りでいるのはそのせいか」
真剣な瞳を向けてきた彼に苦笑いを返した。
蒼龍と戦争になってから私は避けられるようになった。前々からだったけど、少なくとも話せる友達は居たのだ。今はそんな人も居らず、暇で此方によく来る。チョコボ牧場の世話係の人達は私を避けない所かチョコボ達が何故か大人しくなるので歓迎してくれる。此処が非常に居やすいのだ。
「君は……僕達を恨んでないのか?」
「蒼龍女王暗殺の話?私は自分の目で見たものしか信用しない。それにあの冷徹と言われたクラサメ隊長が必死になって助けようとしたから、してないって確信したもの」
「……ありがとう」
優しく笑った彼にドクッと胸が高鳴る。
私が自分達のせいで避けられるようになったことを気にしていたらしい。優しい人だな。
「貴方こそ私を避けないんだね」
「少ししか話してないが、君の人柄は分かってるつもりだ。それにさっきの言葉で確信出来た。僕は君を避けようとは思わない」
「……此方こそありがとうだよ」
「きっと他の0組の皆も君の気持ちは嬉しい筈だ」
嬉しそうな彼に思わず、久々に笑みが溢れた。その次の瞬間、彼に手を引っ張られた。急だったので私はバランスを崩して、結果彼の胸に倒れた。私の思考は真っ白になり、胸が高鳴る。彼にこの胸の音が聴こえてしまうのではないか。ようやく戻った思考がそう思い、咄嗟に離れようとしたが出来なかった。私の背中に彼の手が回っていた。所謂抱き締められた状態で、状況が分かった私はまた思考が真っ白になった。そのままの状態で、かなりの時間が経過した。ようやく私の思考が戻ってきたころに、彼は口を開いた。
「えっと……すまない」
「は?」
謝った彼に思わず、素で返した。疑問が浮かぶなか、少しだけ身体を離した彼は真っ直ぐに私の顔を見てきた。こんなに間近で彼の顔を見たのは初めてで、微かに体温が上昇する。
「出会った日以外で初めて君の笑顔を見た……」
「そう、だっけ」
「急に手を引いてすまなかった……抱き締めたかったんだ」
彼の言葉に耳を疑った。彼は今度は強く抱き締めてきた。私は思考を切らないようにするのに必死で、彼の顔が赤いのに気が付いていなかった。そのまま私の耳元に顔を持ってきた彼にもう私の思考はパニック寸前だった。
「え、ちょっ」
「いつの間にか惹かれていた……君が好きだ」
その耳元で言われた甘い声に完全に思考がショートした。
彼は今なんと言った?誰が誰を、好きだと、私を?彼が?
チョコボ牧場の係の人達の生暖かい視線を感じる。
「すぐに返事が欲しい訳じゃない。ただ、伝えておきたかった」
そのまま私を離して去ろうとした為、思わず彼の服を掴んだ。
「!?」
「ままままっ待って」
今伝えた方がいい。こんなチャンスはない。それに今私達は戦争をしているのだ。いつどちらかが死ぬか分からない。少し気持ちを落ち着かせてから、言葉にした。
「私も……すすっ好き、です」
「!」
彼が物凄くビックリした顔をしていたが、優しい顔になって今度は優しく抱き締めてくれた。
「思っていたよりも嬉しいな」
私の頭を優しく撫でてくれるその手が気持ち良くて、久し振りの人の暖かさで非常に嬉しく感じた。一時すると彼がふと口を開いた。
「今更なんだが……」
「?」
「君の名前を教えてくれないか?」
「あ」
そう言えば、ほんと今更ながら彼の名前を知らないことに気がついた。好きな人の名前を知らない私って……。
「僕はエースだ」
「名前、名前=苗字だよ」
「名前……これからもよろしく」
「此方こそよろしくねエース」
可笑しくなって二人で笑いあった。
一目惚れ
そのすぐ後に、私の0組に移動通知が来て思わずエースと顔を見合わせた。
(これで名前の傍に居て護れるな(今ならマキナがレムを想う気持ち分かる気がするよ))
(ありがとうエース……)
Fin.
〔FF零式に手を出しました←。長編は難しいけど短編・中編なら書きやすいかもしれない。エースが非常にカッコイイ!だが、管理人の本命はトレイだ〕
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