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◇hnmz
9.(sideH)

「花井って、水谷の事避けてるの?」
部活の休憩に入る直前、皆から少し離れた場所で二人きりになると、
栄口から突然切り出された。

まさか誰かが気付いているなんて思わなくて驚いた。
避けてた事は認めるが、話さない訳じゃなく、
ただ、自分からはあまり近寄らない様にしてただけだから、
周りには気付かれていないと思ってた。

否定をすると今度は、
「水谷の事よく見てるよね?」
と、更に深く突っ込んできた。

別に…、と誤魔化したけど…。
栄口はきっと気付いているんだろう、俺の変化に。


「水谷の事、…好きになっちゃった?」


俺はその言葉に目を見開いてしまった。

『好き』……?
俺が?
水谷を…?

お前はその言葉を、いとも簡単に口に出せるんだな…。


「……ちがう、好きじゃ…ない。」

だってそうだろ?
俺はお前から相談受けてたんだぞ?
協力するっつったんだぞ??
それなのに、同じ相手を好きになるとか…あり得ないだろ!?
ましてや男なんて…、
水谷だなんて…。



俺が水谷と距離を置こうとしたのは、
アイツが傍にいると、なんかヘンな気持ちになるから。
胸が締め付けられて、息苦しくなったり…。
だけど目線は自然と水谷を追ってしまう。

そして水谷が誰かと楽しそうにしている所を見ると、
決まって胃の辺りがムカムカする…。



本当は自分でも解ってる…。
これを恋と呼ばずして、何と呼ぶのだろう…。


だけど認めちゃいけないんだよ、俺は。
栄口に協力するって言ったんだから…。
栄口が相談相手に俺を選んでくれた気持ちを考えると、
俺はこの想いを封印すべきだと思ったんだ。


「そっか…、ごめん、花井。」
謝りその場を離れる栄口に、
それ以上何も言えないまま、
俺はただ、その背中を見つめるだけだった。

すると、水谷が栄口に歩み寄って行くのが見えた。



あぁ、ホラ…。

まただ…。


胃の辺りがムカムカする……。







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あきゅろす。
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