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◇hnmz
5.

部活をいつも通りこなして、
部室で着替え、帰り支度を整える。

帰って早く寝よう…。そんな事を考えていたら、
ふいに阿部が、
「今日、調子悪いの?」
と、声を抑えて聞いてきた。

「…え?何で??」
素朴な疑問だった。
なぜなら、俺はいつも通りだったから。
自分はいつも通りだと思っていたから…。

「なんか『心ここにあらず』って感じだったから。」
「…っ!………。」
一瞬言葉に詰まったが、
「そうか?そんなつもりなかったんだけど…。」
と答えた所で、ふと、部活前に水谷と栄口が喋っていた姿が頭を過った。

「そっか…。悪かったな、変な事言って。」
阿部はその後何事もなく、練習着をかばんに詰め込んでいた。


今日の俺はそんな風に周りから見えていたんだろうか。
今思えば確かに、多少の物足りなさは感じていたかもしれない。
何にかって…。
多分、水谷に…。

気付けばいつも隣にいたヤツが、突然いなくなったら、
誰だって少しは寂しく感じるものだろう。
これは極普通の考え。
そいつが自分の中で占める割合が高ければ高い程……。
…俺にとって水谷は、どの程度の存在だ…?

今まで当たり前過ぎて気付かなかったけど…。
いつもアイツは隣にいたんだよな…。


………………。


「花井!」

「へ?」
「何やってんの?皆もう出たよ??」
西広の声に顔を上げると、部室には俺以外誰もいなかった。

「あっ、悪ぃ!」
かばんを持ち急いで部室を出ると、
「どうしたの?大丈夫??」
入口に立っていた西広が、心配そうに聞いてきた。

「あぁ、ちょっとボーっとしてた。」
苦笑いを浮かべながら戸締まりをする俺。
「そっか。あんま無理しないでね?
ホラ、早く。皆下で待ってるよ。」
笑顔を残して西広は、皆のもとへ向かった。
今日は色んなヤツに心配かけちゃったな〜。


ガチッ。
と、鍵をかけた所で何気なく思う。

水谷と栄口がうまくいったら、
ずっとこんな寂しさが付き纏うんだろうか…。




俺は慣れてしまわないといけないのか?

この寂しさに……。







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