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◇hnmz
3.

次の日から、
俺の水谷と栄口の観察が始まった。
水谷と栄口、というか主に水谷の観察だ。
だって気になるだろ?
あの、人を見る目がありそうな栄口が、
男同士というリスクを背負ってまで好きになった相手が。
水谷は、顔立ちもいいし明るい性格だから、
人に好かれるだろうとは思うけど…。
正直そこまでの魅力がある様には見えない。
それとも、俺には見えてないモンが栄口には見えてんのか?



「はっないー!」


気付けば水谷の顔が目の前に。

「ぅおっ!」
「…何?そこまでビックリする事なくね??」
頬を膨らませながらも、俺の前の席に後ろ向きに座りノートを机の上に置く。

「英語。見せて!」
これでもかってくらいの満面の笑みでお願いされたら、お人好しの俺は断れない。
「ったく。自分でやれよな〜。」
「途中まではやったよ?でも気付いたら寝てて…。」
エヘッ。なんてぶりっこするもんだから、
憎らしくなり、頭に軽くチョップをかましてやった。
栄口ならこんな水谷も可愛らしいと思うんだろうか…。

「ちゃんと考えながら写せよ?」
溜め息混じりに言えば、
「わかってるって〜。」
と、頼りない返事。
せっせと宿題を写す水谷の頭に目をやると、
頭を振る度に色素の薄い柔らかそうな髪がゆらゆら揺れる。
柔らかそうだな〜なんて思いながら、じーっと見つめていると、
「…花井…、見すぎだよ。」
宿題を写す手を止める事なく、照れ臭そうに水谷が頬を赤らめる。


あぁ、こんな顔もすんのか…。
確かに人を惹き付ける雰囲気があるかも…。
そう、ぼんやり思った。


でも俺には栄口の気持ちは解らないな。
同じ『かわいい』なら、やっぱ女の子の方がいいだろ。




ん?



今、俺水谷の事何て…?

…いや、深く考えるな。
栄口に当てられてるだけだ。
きっと、そう!
よし!もう考えるのは終わり!!


俺は、水谷を見ないように視線を窓の外に移し、今日の部活の事に頭を巡らす。


あぁ、今日も晴れてるな…。







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あきゅろす。
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