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◇hnmz
12.


季節が移り変わるのはあっという間で、
つい先日まで木々を彩っていた色とりどりの葉っぱたちは、ほとんど枯れ果て、
露になった細い枝は、これからの寒さを象徴する様に冬の訪れを告げた。




あれから二週間。
俺は何も行動を起こす事はなく、
ただ遠くから水谷を見ているだけだった。

栄口はというと、水谷に振られた筈なのに、
以前にも増して二人は仲良くなった様に感じる。
そんな栄口の状況を見ていると、
『俺もダメ元で告白してみようか…。』
なんて淡い期待をしてしまうけど…。

男同士で告白して振られて…それでもお互いの関係がギクシャクしないのは、
この二人…水谷と栄口だからなんだろうな…。
俺とじゃ、無理だろう…。

俺がまず普通に接する事が出来ずに、きっと水谷を傷付けてしまうんだ。
やっぱり…告白は出来ねぇよ。


意気地なしだって自分でも思う。
でも今の関係を壊したくないんだ。
水谷に嫌われたくないんだよ…。
水谷が、大事なんだよ…。




「なーに辛気臭い顔してんの?キャプテン。」

窓の外を見ながら教室の前の廊下でボーッとしていたら、ぽん、と背中を叩かれた。
振り返ると、笑顔で栄口が立っていた。

水谷が好きだと栄口に打ち明けてから、
何となく栄口の目を直視出来なくて、一瞬合った視線を逸らして、再び窓の外へと視線を移した。
栄口は、そんな俺の隣に並んで同じように窓を眺めて、

「……水谷の事?」
と微笑んだ。
無言で頷くと、栄口は窓に背を向けて、

「難しく考える必要ないと思うけどなー。」
と、俺をちらりと見やった。


どうして栄口はこんなに俺に協力的なんだろう…。
俺は全然栄口の力になってやれなかったのに…。



「…栄口は、もう水谷の事ふっ切れたのか?」

だって、じゃなきゃこんな協力的になれる筈ないだろ…。


「……まさか。
…今でも好きだよ…。」


えっ…?


「そんな簡単に諦められる訳ないじゃん。
…本気で好きだったんだから…。」


そう言って、窓の外遠くを眺める栄口の目が、
すごい穏やかで、思わず、

「告白した事、後悔してないのか?」

なんて不躾な質問をしてしまった。

一瞬目を丸くして驚いた栄口だけど、
微笑み、無言で首を横に振った。



キーンコーンカーンコーン…

予鈴が鳴った。


「じゃあね、花井。」
笑顔でその場を去る栄口を見送り、俺も教室へと戻った。



教師の退屈な話なんて耳に入ってこない。
俺は先程の穏やかな栄口の目を思い出していた。


振られても…好きでいていいんだ…。

振られたからって、
諦めなきゃいけない訳じゃないんだ。
想うことに終止符を打つ必要ないんだ。

好きで…いいんだ……。


……そっか。



水谷との関係が壊れるのも怖かったけど…、

水谷の事を諦めなきゃいけないのも嫌だった。



俺も…、
告白、出来そうな気がする…。




告おう……。





この想いを、伝えよう…。



俺より前の席に座る水谷の背中を眺めながら、
そう決意した。







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あきゅろす。
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