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◇hnmz
11.


「……やっと、本音言った…。」
「……うん。ごめん…。」


栄口が涙を手の甲で拭いながら、上目遣いで睨んでくる。
俺と目が合うと呆れた様に笑いながら、
「馬鹿だよ、花井は。」
そう言い、『俺もだけど…。』と小さく呟いた。


「…っあぁー、すっきりしたぁ!」
大きく伸びをし、窓から外を眺める栄口の目には、
もう涙は見られなかった。
むしろ目には笑みを含んでいて、
いつもの微笑みで此方を振り返った。

「俺の事があったから、本当の気持ち言えなかったんでしょ?」
俺が返答に困って、目線を泳がせていると、
「花井は責任感強いからなー。」
ははは、と笑いながら視線を再び窓の外へと移した。

俺は責任感なんて強くねぇよ。
結局、逃げてたんだ。
栄口の為とか言って、
栄口の所為にして、
水谷への気持ちから逃げてただけなんだよ…。
俺はただの卑怯者だよ…。


「…でも、もう俺の事は気にしなくて大丈夫だから。」
「え…?」
視線は外にやったまま栄口が笑う。
その笑顔が寂しそうに見えたのは、気のせいだろうか…?



「俺、この前告白したんだ…水谷に。」



え…?
どくん、と大きく胸が鳴った。


「『好きな人がいるから』って振られちやったけどさ。」


え…、ちょっ…待てよ…。
告白…したのか!?

それに、何??
振られた!?


水谷に『好きな人がいる』って…栄口じゃなくて?
最近二人は仲が良いから、水谷も栄口の事好きなのかと思ってた…。

あ…。それとも、普通に好きな女子とかいたのか?
俺が気付かなかっただけで…。



そっか…。
好きな人、いたんだ…。
急に指先から血の気が引いていく感覚に襲われる。


「…俺は告ったよ?」
気付けば、栄口の視線は此方に戻っていて、
先程泣いた所為か、
振られたという事を思い出してしまった所為か、
縁を赤らめた目で、真っ直ぐ俺を見ていた。




「花井は…、
告わないの…?」



俺が水谷に告白?

そんな…。
告白したところで、望みなんてないじゃねぇか…。

なら、告白なんかして今の関係が壊れるより……。


「ずっとこのままでいいの?」



心を見透かされてるのかと思った。




結局俺は栄口の問いに何も答えられなかった。




本当に俺は、このままでいいのだろうか…。



想ってるだけで満足できるのか…?







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あきゅろす。
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