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◇hnmz
10.


昼休みの部室。

俺と栄口の二人きり。
最初は屋上って言ってたけど、
秋も深まり、冬支度が始まるこの季節に、
いかに昼間と言えど屋上の寒さは堪えるので、
二人で足早に部室へと駆け込んだ。


今度は何を言われるんだろう…。
そう身構えていたが、
「ごめんな。この前から何度も呼び出しちゃって…。」
思ったより穏やかに笑う栄口を見て、少し緊張が緩んだ。

「いや…。
…で?どうかしたのか?」
なんて、とぼけた風を装ったが、
水谷の事なんだろう、そう予想はついていた。



「…もう一回聞くけど、
花井は水谷の事、好きじゃないの?」





「……………好きじゃ、ない。」

たっぷりの間を置いて俺は答えた。
『間を置いた』というか、置かざるを得なかった。
この想いは封印すると決心しておきながら、
まだ迷ってる部分があったから…。




「…嘘、つくなよ。」
栄口が俯き呟く。
心なしか肩が震えているように見える。

「本当はっ…!我慢、してんだろ!?
俺が好きだって言っちゃったから!
花井に、相談しちゃったから…っ!!」
再び顔を上げた栄口は目元に、
今にも溢れんばかりの涙を浮かべていた。


何故、栄口が泣いているんだろう…。

俺は正直驚いた。


「教えてくれよ…。花井の本当の気持ちっ…!
好きなんだろ?水谷が…。」
数歩歩み寄り、
俺のシャツの胸元を握りしめ、
縋りつく様にして泣き出す栄口。


何で栄口がこんな苦しそうにしてるんだ……?





……あぁ。
俺の所為か…。
俺が栄口の為に水谷への気持ちを我慢する事によって、
逆に栄口に責任感じさせて…、
結果、苦しめてしまったんだ…。


結局俺のした事は、
お互いを苦しめるだけだったんだ…。




ごめんな、栄口……。




ごめん……、





「…俺、…水谷が好きだ。」







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あきゅろす。
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