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◇hnmz
1.(sideH)




気付けばいつも隣にいた。

いつも隣で笑っていた。

俺はその笑顔に元気づけられていた。
癒されていた。

お前の存在が、
俺の中でこれ程までに大きくなっていた事に、
俺は気付けないでいた。





真冬の向日葵。




「俺…好きな人が、いるんだ…。」

部活が終わり誰もいなくなった部室で、
栄口の震えた声がやけに響いて聞こえた。

『相談したい事があるから』と栄口に言われ、部活後に二人で部室に残っていた。

皆が帰っても中々口を開こうとしないから、
余程深刻な相談なんじゃ?と思っていた。
それが恋愛相談だと分かって内心ホッとする。
なーんだ、ただの恋愛相談かぁ。
栄口が恋愛相談なんて少し意外な気もするけど。
でも相談相手に俺を選んでくれた事は、正直嬉しく思う。
信頼さるてんのかな、と期待してしまう。

「何だよ、すげぇ深刻な顔してたから、
とんでもなく凄い事相談されるのかと思ったぞ。」
はぁー、と安堵の息を漏らす。
俺とは対照的に苦笑いを浮かべる栄口。いや、照れ笑いなのか?

「…で?相手は誰なワケ?」
俺は段々と興味が湧いてきて、深く追求し始める。

「…ん、と…。」
言いにくそうに視線を伏せる栄口。
ちょっと直球すぎた?
そりゃ恥ずかしいよなっ!
悪ぃな、なんか気が利かなくって。

「俺の知ってる子?」
少し質問を遠回しにしてみる。
「……うん。」
「マジ!?」
誰だ??
おぉ…!なんかテンション上がってきたぞ!?
『次は何組か聞いてみよう』などと企んでいたら、
栄口がふぅーっと大きく息を吐いた。
そして、きゅっと口を結んで俺の目をしっかり見据えてきた。
お?決心ついたか??

「…水谷…。」

「……水谷?」
一瞬、へらっと笑った野球部の水谷が浮かんだが、
すぐに俺の知ってる『水谷』という名の女子を捜す。
…あれ?
俺の知ってる女子に『水谷』っていう名前の子いたっけ…??

「え?…何組?」
俺が思い出せないだけかも…。
「…………。」
少し長めの沈黙。
栄口…?


「…7組の…野球部の、水谷。」


ん?


へ??


んぁ!?



ぅ、ぇえええぇぇぇぇ!!!???







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あきゅろす。
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