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☆abmz
なんとなく(阿水)
※色々好き勝手に設定してます

















夏休みに入ったということもあって、俺たち野球部は学校で合宿することになった。
このメンバーで合宿するのは二度目だし、前回の事でみんな勝手が分かってきたから、だいぶやり易くはある。





だけど、あの頃と一つだけ変わった事がある。



……俺と阿部の関係だ。



俺と阿部は、ついこの間恋人同士となった。
なんとなーくそんな雰囲気になって、なんとなーく付き合い出した、なんとなーく微妙な関係。

阿部ってホントに俺の事好きなのかな?まぁ、ただ流されて付き合うとか、阿部に限ってないとは思うけど…。
明確な言葉を貰った訳ではないので、やっぱり不安ではある。


肝心の俺はというと、阿部の姿が視界に入る度、阿部の声が耳に入ってくる度に、きゅん、と胸がときめいちゃってるもんだから、俺が阿部に恋しているのは間違いないだろう。



阿部の気持ちが知りたいな……。


















丸一日ぶっ通しの部活が終わり、びっしょりとかいた汗を流すべく、夕食前に近くの温泉施設へとみんなで向かった。
学校である程度、土とかヒドイ汚れは落としてきたけど、ベタベタとまとわりつく汗を早く洗い流してさっぱりしたい。そう思いながら脱衣場で急いで服を脱いでいると、なんとなく振り返った先の阿部と視線がぶつかった。

珍しいな、普段は目なんて滅多に合わないのに。

ふっ、とすぐに視線は逸らされたから、俺は再び脱ぎかけの服に手をかける。








あれ?
もしかして………阿部って俺の事見てたんじゃ…?
なになに?俺のハダカに興味あった??ま、しょうがないよね、俺たち付き合ってんだしね!












……なんて、くだらない妄想はやめよう…。そんな都合のいい話がある訳ないし。
俺は、頭を振りため息をつくと、下着にかけて少し躊躇っていた手を思い切り下ろした。




瞬間、阿部が向こうでむせる。








……えっ!?

阿部さん、……本気ですか??

マジで俺のハダカに興味あったの?



















「おっ、結構空いてんじゃん。」

「だからってあんま騒ぐなよ?」

「分かってるって!」



お決まりのような田島と花井のやりとりを見ながら、ぞろぞろと大浴場に入っていく。
俺は栄口としゃべりながらも、意識は阿部に集中していた。
だって、さっきの妄想がもしかしたら現実かもしれないんだよ!?これは意識せずにはいられないでしょう。
高まる期待に、今度は意識的に阿部を見る。思った通り目が合った。


阿部、絶対俺の事見てる……!
阿部も俺の事ちゃんと意識してくれるって事……、だよね?



そうと分かると途端に恥ずかしさが込み上げてきた。自分が性的対象として見られていると思うと、羞恥を通り越して不快感さえ湧いてきそうだ。今なら女の子の気持ちが分かる気がした…。
幸い俺の場合、その相手が恋人だから不快感なんて感じないけど、とてつもない恥ずかしさは拭えない。恥ずかし過ぎて、これは一種の視姦プレイなのかと疑ってしまうくらい。





身体をキレイに洗い湯船に入る。身体を洗ってる間も阿部の視線が気になって仕方なかった。向こうも身体洗ってんだから見ようがないだろうに……それでも隙をみてはこちらを覗いているんじゃないだろうか、と阿部にとって迷惑な妄想を脳内で繰り広げていた。


そんな妄想も湯船に浸かれば、沸き上がる湯気と共に薄らいでいった。










はぁ〜…やっぱ大浴場は気持ち良いなぁ。


壁に背をもたれ、手足をいっぱいに伸ばして顎辺りまで湯に浸かる。
隣では巣山が俺と同じように、目の前では田島や三橋が賑やかに大浴場を満喫している。
目を瞑って疲れた身体を癒していると、湯面が揺れて人が近づいてくる気配がした。目を開けて見れば隣に阿部がいて、俺は驚きのあまり一瞬湯船で溺れかけた。隣にいた巣山が、どうした?と心配してくれたが、な…何でもない、とぎこちなく答えて阿部を見る。



「何やってんだよ、バーカ。」



憎らしく笑う阿部に『お前のせいだよバカ!』と心の中で毒づいた。口ではとてもじゃないけど言えないし。せめて表情だけでもと、膨れっ面を浮かべながら、溺れかけてズレた座り位置を戻す。


その時、ふと自分の身体が目に入った。丸見えだ。
タオルは湯船につけちゃいけないから頭の上だし、お湯も透明で、半分寝そべった状態の俺のハダカは当然の事ながら上から丸見えだった。そして今、隣に阿部がいる。





俺は伸ばしっぱなしの手足を縮め、膝を抱えて座り直した。
…だって、阿部に見られるの恥ずかしいじゃん。


どんだけ乙女思考なんだよ!って突っ込まれそうだけど、好きな人にハダカを見られるのはやっぱ恥ずかしい。
そのせいか、湯船に浸かりすぎたせいか、顔がスゴい熱くなってきた。



このままだったら逆上せてしまうんじゃないだろうか……。
そう思った時、身体の横にぶらりとぶら下げていた手を誰かに握られた。その誰かとは……もちろん、阿部だ。


まさかと思って、ゆっくりと阿部を見ると、本人は何事もないように平然としている。


な、何なの!?この男……?
平静を装いながら、水面下では今どき小学生でもしないような甘えん坊振りを発揮しちゃって……。
なんて恥ずかしい奴……。
お前みたいな奴はムッツリ決定だ!
このムッツリ阿部めっ!!



阿部の思いがけない行動のせいで、俺の逆上せは余計に増したようだ。



「…ごめん、ちょっと逆上せたかも…。」



いよいよ気分が悪くなってきたので、そう阿部に告げれば、握られた手をあっさり解いてくれた。
浴槽の縁に手をかけ立ち上がろうとすると、急に目の前が真っ暗になった。そして、頭から、指先から、血の気がひいていく感覚に襲われる。逆上った血が一気に下がってしまったのか、俺は立ち眩みを起こしてしまった。縁にかけた手に力を入れ、遠退きそうになる意識に必死に保とうとしていると、俺の変化に気付いた阿部が声をかけてくれた。



「どうした?大丈夫か?」

「……ん、なんとか…。」



ようやく暗やみに光が差し込んできて、視界がクリアになっていく。だけど血の気の引いた頭や指先は、うまく回らないし力が入らない。



「水谷逆上せたみたいだから、先に上がらせとくわ。」

「お?おぉ…大丈夫か?」



阿部が巣山に簡単に説明して、俺は阿部に支えられながら大浴場を出た。脱衣場には扇風機が備え付けてあり、扇風機の風がよく当たる所の長椅子に俺は横になった。



「大丈夫か?」



腰にタオルをかけられて、軽く瞑っていた目を開ければ、俺の傍らにしゃがみこんだ阿部と目が合った。



「あ〜…だいぶ良くなった。阿部、ごめんな?迷惑かけて…。」

「気にすんな。……嫌なら最初からしねぇし。」

「はは、そっか…。」



阿部のひねくれた返答に笑いが漏れた。言い方はひねくれてるけど、言ってる事は優しかった。その証拠に今だって俺の身体をタオルで丁寧に拭いてくれている。阿部の面倒見のよさや甲斐甲斐しさは脱帽ものだ。
ここぞとばかりに阿部の優しさに甘えてみたい気がしたので、俺は再び目を閉じて阿部に身を任せた。




















「ん、ぁ……。」



無意識に漏れた声に、俺は慌てて手で口を塞いだ。
身体を拭いてくれてる阿部の手が腹の辺りを行き来してる頃から、どことなくむず痒さは感じていたけど、その手が内腿に触れた時に思わず声を漏らしてしまった。
きっと逆上せたせいだ、と自分に言い聞かせる。阿部も驚いているかもしれないと思い、『今のは違うんだよ?』と言い訳しようと、頭だけを上げ傍らに立つ阿部を見る。





その阿部の顔を見て、俺はその言葉を飲み込んだ。
阿部は口元を手の甲で押さえ、見たことないくらい真っ赤な顔で俺の下半身を見つめたままつっ立っていた。俺の脳は阿部のその表情を『今必死に理性を保とうとしてるんだ』と瞬時に勝手に都合よく解釈した。


今度は頭だけじゃなく上半身を起こして阿部を見つめる。







もし阿部がその気なら……。










「阿部、……俺、したいかも…。」







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