気付いて、番長! 理由は 「和くん、おはよ」 「・・・はよ」 へにゃりと笑ってくるその顔に、いつからか恋をした。明確に意識したのは小学4年に上がった時。裕は6年生で、通学班の班長をしていた。 家が真向いで、親同士の仲もいいため、何処に行くにも一緒に過ごしていた俺を、裕は弟のように可愛がってくれた。 でも恋心に気づいた時にはそれがうざったらしくなった。 恋人になりたいのであって、俺は弟になりたいわけじゃない。 「裕、好きだ」 手を繋いで、目を合わせて告白してみても、結局裕からしてみればただの好意で、弟という立ち位置は変わらなくて。 さらにその時、裕は同じクラスの大人しい女子に好意を抱いていた。俺の前で「あの子と今日こんな話した」「ノート貸して貰っちゃった」などと、顔を赤くして言うもんだから、俺のイライラは毎日ピーク寸前で。 だから、どうにかして俺を見てほしい!俺のことだけ考えてほしい!とばかり考えて、編み出した言葉が、「番長」だった。 まぁ、最初は間違えて班長を番長って呼んだことが始まりなんだけど。 裕も始めのうちは「和くん間違えて可愛い(はーとまーく)」って感じだったんだけど、 「ばんちょー、今日母さんがうちに寄れって」 「番長、分かんない問題がある」 「あそぼーよ、ばーんちょ」 「なぁなぁ番長はあのおばさん知ってる?」 「番長部活無いなら帰ろ」 などと毎日通学団での登校中や、休み時間に裕のクラスに遊びに行くたびに「番長」を執拗に連呼していたためか、ようやく焦り始めた時には時遅く。 「裕くんって番長さんなんだ」 と、好意を寄せていた女子が引いていた。 中学校に上がっても俺の「番長」呼びは続いた。ただし時と場合を選ぶようになった。 例えば女子と話していたらもちろん、俺以外の奴と俺以上に親しくしていたら呼ぶし、弟として見た場合も「番長」と呼ぶ。その度に周りの人間は「え、お前番長なの?」と一定の距離から近付かなくなっていった。まぁ、俺の「こいつは俺のだから手出すな」という牽制も伝わっていたのかもしれないが。 でもそんなことも露知らず、裕に「番長」と言えば顔を真っ赤にして怒るもんだから、もうそれが本当可愛くて。時折、その顔が見たくて呼ぶことだってある。 それが、俺が裕を「番長」と呼び始めた経緯。 でも裕は、俺が弟呼ばわりされることが気に入らなくて「番長」って呼んでいるってことは理解しているけれども、相変わらず俺の恋心に気づかず。 相変わらずの鈍感さに呆れてはいたものの。 あの男は気に入らない。馴れ馴れしく裕の肩に腕なんか組みやがって。しかも裕の事好きって目をしていた。俺と同じ目。 「ちょっと許せねぇな・・・」 一般にも解放されている図書室で呟く。解放されていても人はほとんどおらず、日当たりの良い席に座って腕を組んで目を瞑った。 あとでどんな牽制をしようか、考えながら。 (始まったのは君が原因) [*前へ][次へ#] [戻る] |