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気付いて、番長!
その意味は?

裕にしてみれば近所の幼馴染みで弟のような存在だと言っていたが、実際に目にして見れば長身のイケメンだった。
芸能人のような顔立ちにすらりとしたモデル並みの体躯。裕曰く、中高共に成績はトップを独走しているが、勉強をしているところを見たことが無いそうだ。天は二物を与えずとか言う言葉は嘘だな。

眠気が覚めた2限の講義中、隣り合って座り、ノートを取りながらルーズリーフで会話をする俺たち。この授業は受講している学生も多いため、壁際の後ろの席に近い俺たちのこの行為に教授は気づくことなく、話を続けている。

モテるのに、なぜか今まで彼女を作ったためしがないのが不思議だ、と首を傾げる友人を見て、こっそりため息をつく。安堵のため息だ。正直、あんな完璧イケメン相手に好意を寄せられたら、男でもイチコロだろうが、ありがたいことに俺も好意を抱いているこの如月裕という人物は超がつくほどの鈍感だ。和希君とやらの好意に全く気付いていない。

『ていうか、番長ってなんだよw』

そう書いてルーズリーフを渡す。和希君が去り際に裕に言い残し、裕が叫んで否定した言葉だ。番長なんて風格も無い、ごくごく平凡な一般男子である裕からは想像もつかないその名前の意味を問うと、裕は動きを止めてその一文をじぃっと見つめる。
いや、良く見ると手に持ったシャーペンを持つ手がふるふると震えている。

「・・・おい、裕」

小声で名前を呼ぶと、はっと現実に戻ってきたようで、紙にシャーペンを走らせ、返してきた。

『意味なんかないぜ\(^o^)/』

・・・・・・・・・いやいやいや。意味がないならさっきの間はなんなんだよ!
そう書こうとした途端、ピュッと紙を取り上げ、また何か書き足して返してきた。

『意味なんかほんとないから\(^o^)/あいつの悪ふざけー』

大切なことだから2回書いてきたのか?そう思って裕を見ると、大変ぎこちない表情で親指を立て、この「意味なんかない」は間違ってないと言いたげな表情だ。
というか、目が死んでる。意味なんかないからそれで納得しろよという空気が伝わってくる。

これ、多分もう触れない方がいいんだろうな。嫌われたくないし。

そう思いながら、話を変えるべく、シャーペンを走らせた。


俺、内海総一は裕が好きだ。それまで付き合ったのは女の子だし、男が男に恋をするなんていうのは、高校の時に女子が教室で盛り上がっていた話の内容だけだと思っていたので、まさか大学一年の春に恋した相手が男なんて、いつだれが予期できたことだろう。

だが俺は裕に恋をした。ふわんとした空気は傍に居て居心地が良いものだし、聞き取りやすい声は心地よい響きだ。特に美人な訳でもかっこいいわけでもない、ごく一般的な特徴しかない裕に、俺は恋している。

だけれど告白してこの関係が崩れるのは正直怖いし、そんな勇気もない。
だけど、ただあの和希っていう男にだけは取られたくないなぁ、なんて思いながら、くだらないことを書き足した紙を裕に渡した。






(だけどいつかはちゃんと)




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あきゅろす。
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