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気付いて、番長!
それは愛情?


電車で揺られること20分、そこから徒歩10分ほどで、裕の大学に到着した俺はそのまま敷地内に入っていく。ちょっと前に裕に着いたって連絡したけれどまだ返信は無い。たぶん、まだ講義中なんだろう。特になんとも思わず、売店へ向かう。
適当にチョコとガム、缶コーヒーを1つ買い、会計を済ませてそのまま食堂へ。土曜だが、サークル活動で登校している学生がちらほら見られた。
だが俺は気にせず、日当たりのいい場所に座って缶コーヒーを開け、携帯を取り出す。特にすることも無いのでゲームを起動させ、パズルゲームを淡々とこなし始めた時。

「かーずきっ」

がたん、と椅子に足を引っ掛けながら裕が走ってきた。ドジ。

「すまん、待たせたーっ」

引っ掛けた足が痛かったのだろうか、眉をしかめながらも笑顔を作ってみせる。俺は少し笑いながら、持って来た青色の大学ノートを差し出した。

「おら、ご所望のブツだ」

ありがたく受け取れ、と言うと、裕は笑いながら「ありがとうー!」と言って受け取った。くそ、相変わらず可愛いな。

「おぉー・・・これこれ。いや、昨日リビングに置いてきちゃってさー」
「あ?お前の部屋にあったぞ」
「・・・え、入ったの?」
「今さらだろ」

そう言って一口啜ると、裕は「あー」とか「えー」とか視線を泳がせる。その挙動不審な姿に、あぁ、と思い出す。

「寝坊してすっげー服が散乱してたけど、おばさんが気にすんなって」
「あああああああやっぱそうだったよねええええええ」

声を震わせ、頭を抱える小動物に俺は噴き出した。コーヒーからは口を離していたから、ドラマや漫画のような大惨事は免れていたけれど。

「ていうか母さんも気にすんなってさー・・・気にするよー・・・」

唇を尖らせる姿に俺は今朝見た夢の事を思い出した。
現実はあんなに熱くて甘いんだろうか・・・そう思って頭を振り、気を反らす。下半身が反応しそうだった。あぶねー。

「てか、大学まで来てもらってゴメン」
「別に、いーよ。逆に駅とかで待ち合わせたら時間つぶすのに困るし」

静かな場所と机があったら寝られる、むしろ駅で待ち合わせてそこから90分待つとか無理。勧誘とか、逆ナンとか色々うざい。だが裕は少しばかり気にしていたのか、ヘラ、と笑って「ありがと」と返してきた。くそ、マジで可愛いな。

するとちょうどその時、裕の後ろから「ゆーう!!」と名前を呼ぶ声がする。それから間をおかず、見知らぬ男ががしっと肩を組んで視界に飛び込んできた。
いかにもスポーツしてますって出で立ちのそいつに、俺は眉間に皺が寄るのを止められない。

「次の講義さー・・・って、あ、君が弟クン?」
「・・・・・・・・・あ?」

不機嫌丸出しの声が腹の底から出てきて、そのまま視線を裕にやる。すると裕は途端にアタフタし始めて、「いや、あの、」と焦り始めた。

・・・俺が裕の「弟のような存在」と周りに言うことを、腹の底から嫌がってるって分かっていて、未だにそう表現してるってことですか。ああ、そうですか。

すぅ、と目が細まり、口元に薄い笑いが浮かぶ。裕曰く「めちゃくちゃ怒っている時の顔」らしい。確かに怒って頭が冴えると、勝手になってしまうからあながち間違いではない。でもこんな怒り方するのは裕に対してだけだ。そして裕も「やばい」と顔に表れ、「か、和希?」と恐る恐る声をかけてきた。

「相変わらず理解してねぇみてーだな、番長?」

その言葉に、ぴしり、と音がしそうなくらい硬直する。相変わらず腕を肩に回したままの不愉快ヤローは「え、番長?」と首を傾げている。俺は椅子を引いて立ち上がり、裕のノートの上にさっき買ったチョコレートを乗せ、顔を覗き込む。ヒクリ、と引き攣った顔の裕に、満面の笑顔で口を開いた。

「じゃ、後でな。講義頑張れよ、番長」

そういって背を向け、寝るために図書室へ歩き始める。しばらく不愉快ヤローが「おい、裕?」と固まっている裕に声をかけているのが聞こえたが、気にしない。自業自得だ。
そしてあと少しで食堂出口、というところで

「・・・番長って、呼ぶなあぁぁぁぁぁ!!!」

といつもの言葉が叫ばれる。

ばかだなー。これで今日いる学生には「あいつ番長って呼ばれてたぞ」って認識されるんだ。自分で種を撒いちゃって、ばっかだなー。

そんなことを思いながら、にやにやと笑いながら食堂から出た。






(学習しようぜ、番長)





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