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気付いて、番長!
それは記号



ヴーっと携帯が鳴り、和希からの返信を開く。そこに書いてあった内容に、くたりと首を傾げた。

「付き合ってくれたら・・・?」

なんのことだろう、と思い頭を巡らせれば、あっと気づく。

「大学終わったらでいいよな・・・」

土曜の授業は2限で終わる。昼には帰路に着くから、駅で待ち合わせをすれば12時半くらいに・・・
そう頭でシチュエーションしながらメールを返せば、隣にいた総一が唸り声をあげた。

「何にやけながら携帯いじってんだよ、彼女か」
「違う違う、弟だよ」

そう答えると総一は、ん?と一瞬何かを考える。

「・・・お前兄妹いないんじゃねーの?」
「うん、あーごめん、こいつは家が近所でさ、弟みたいなやつなんだよ」

またヴーっと鳴り、返信。基本短文だから、俺が返すとほぼ一瞬で返って来るから、待つ必要が無くて楽だ。短すぎて、意味が良くわからないときは困るけど。
間違ったことは一つもない。和希は家が近所、というより真向いで、親同士も仲が良い。幼馴染のような存在だけれど、学年が2つ違う。さらに赤ん坊のときから和希とはほぼ一緒に育ってきたし、幼稚園や小学校のとき・・・厳密には、和希が小学校低学年の頃まで、後を追って来ていたため、弟の様な存在だ。
ただ、その和希が俺に反抗期のような状態に入って、もう随分経つんだけれど・・・。

「ふーん・・・で、その弟クンはなんだって?」

くあ、と欠伸をしながら聞いてくる総一に少し前の文章までスクロールして、和希から送られてきたメールをそのまま読み上げる。

「んー、昼からデートしようだってさ」
「・・・はぁっ?!」

がたんっ!と強く椅子を引いて総一が立ち上がる。俺はそれまで「だりぃーねみぃー」とだらけまくっていた総一の行動に驚いて、目を丸くして見上げた。その間にまたヴーっと携帯が震える。

「ど、どうした・・・?」
「でっででででででで・・・!?はぁ!!?」
「あー、こいつ、そういう記号をよく使うだけだから」

驚いたままそう答えると、総一は「記号・・・記号・・・」と呟きながら宙に目をさまよわせ、しばらくして「・・・そっか、記号か」と安心したようにストンと椅子に再び座った。
よかった。1限前の、それも土曜の日で。平日とは違い、片手で数えるほどしかいないため、注目されることはなかった。

「雑誌見ていた時に新しい服が欲しいとか言っていたから、それ見に行くだけだよ。ノート持って行く代わりに付き合え、だって」

と笑えば、総一もへらりと笑って頭をくしゃくしゃと撫でてきた。

「え、ちょ、総?」
「あーいや、なんでもない。いやーそっかそっか!うんうん、お前はそのまま変わるなよ!」
「?うん」

良くわからないけれど、とりあえず頷いて、携帯に目を落とす。するとそこに表示されている時刻はそろそろ教室に行かないといけない時間だった。
荷物を持って席を立ちながら、送信ボタンを押す。
その間も総一はやけに嬉しそうに「記号、記号だよな!」と呟いていた。
朝から変な奴だなぁ。






(同じくらいあいつも変だけど)





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あきゅろす。
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