うたのプリンスさまっ
6

しかし練習室に綾香の姿は見当たらなかった。

もう先に帰ってしまったのだろうか。。。
少し残念に思いながらも

仕方ない、帰るか。。。と思ったその時

ふと練習室のピアノに目をやると、
体を小さく丸めてピアノの上に頭を乗せ
微かな寝息を立てている綾香の姿があった。

『待ちくたびれて眠ってしまったんだね、レディ。。。』

申し訳ない気持ちで胸がキュッと締め付けられる。

綾香の横に腰をかけて、そっと寝顔を覗き込む。
綾香は全くオレに気付く様子が無く、気持ち良さそうに眠っていた。

綾香の頬に掛った髪をそっとすくって耳に掛けてやると、
閉じた瞼の先に走る、細くて長い繊細なまつ毛に思わず見とれてしまった。

艶やかで透き通った肌。
そんなに高くはないが愛嬌のある鼻筋。
桜のように薄くピンクがかった頬。
少しだけ開いた、形の良い口唇。。。。

気がつくとオレは無意識のうちに綾香の唇を指でなぞっていた。

『ん。。。。っ。。。』

綾香の口唇から、時折漏れる小さな声。

『レディは本当に無防備だね。
オレ以外の奴にこんな姿を見られたらどうするんだい?』

誰かに見られたら。
そんな状況を想像してみただけでも嫉妬に狂いそうだ。

嫉妬。
まさかこのオレが、特定の異性にこんなに執着するようになるなんて。
本当に不思議な子だよ、キミは。。。

『そんなに無防備にしていたら、悪いオオカミさんにイタズラされてしまうよ?』

まるで誘っているような姿。
しかし、小さな寝息を立てて眠る綾香の顔にその言葉は無かった。
無自覚。。。ってやつは面倒だ。


『あぁ、目覚めるには王子様のキスが必要なんだね。。。?』

チュッ。

そっと綾香の口唇に軽くキスをする。
すぐに口唇を離してみると、まだまだお姫様は目を開ける様子が無かった。

これじゃあ足りないだなんて、いつの間にそんなに欲張りさんになったのかな?レディ。

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