夏目友人帳
4
蝉の声が響く。
猛烈な暑さの中彼らの会話は、続く。
「・・・祖母を知っているのか?」
「・・・以前この辺りに住んでいて、それはそれは美しい人だった」
斑(もう斑ってことにしてやる)の言葉に、私の頭の中にもレイコさんが浮かぶ。
招き猫の目も閉じられている。
彼もまた、瞼の裏でレイコとの記憶を映し出しているのかもしれない。
「―へぇ・・」
「そして、お前のようにあやかしものを目に映すことができた」
生きている人間とも区別がつかなくなるくらい、彼女の目には妖がはっきりと映っていた。私のように妖祓いの家系でもないのに、だ。
「それゆえ」
そう、だからこそ。
「人は誰も彼女を理解らなかった」
彼女は、孤独の中にいた。
「・・・・へぇ」
夏目貴志の目が色を失う。
レイコさんの気持ちが彼には理解できるのかもしれない。
同じような人生を歩んだほかならぬ彼だからこそ。
「彼女はいつもひとりだった」
「いつもいつも ひとりだった」
「そこでレイコは、妖怪相手に憂さ晴らしをはじめたのさ」
・・・。
なんかこうやって聞くとレイコさん、なんだかな、だな。
私がレイコさんに会ったのは、レイコさんがすでに最強・・いや最凶と呼ばれるようになってからだ。
昔のことはくわしくは、知らなかったが・・・本当に何してんだ、レイコさん。
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