夏目友人帳
2
全速力で、かつて過ごした山道を走り抜ける。
大切な記憶が溢れてくる。
『あははははは。また負けたの?』
『な!笑わないでよ!私だってレイコさんみたい
に格好良くなりたくて、お供え物のまんじゅう食べたら、殴られたの!!痛いんだから!!』
憧れて、真似て、彼女のようには、なれないと知った。
それでも今でも、私の手の届かないところに貴女はいる。
あの時が生きてる中で一番幸せだった。
過ぎ去って気づいた頂。
あれから、私もずいぶんと変わってしまった。
どお
「いで」
倒れる音と、変な声がして、意識が『今』に向けられた。
人の気配と妖の気配が一つずつ。
[おお。結界が破れた・・・]
!!・・この声
私は、木影から様子を伺うことにした。
レイコさんにそっくりな青年が、あわてて結界に使われていたらしい破れたしめ縄をくっつけようとしている。
奥には古びた祠があり、あそこに妖が封じられていたらしい。
青年は、必死にしめ縄を手に取ってるが・・。
いやいや、結界はそんな簡単なつくりじゃないから無理だと思うぞ?
[よくやってくれたぞ 小僧。ああ 外へ出られる]
バンッ
大きな音がして、祠の扉が開けられた。
そして、招き猫が現れた
・・・・。
青年が、ぷっと吹き出した。
私なんか、こけそうになった。
瞬間、祠が壊れた。
・・・招き猫によって壊されたのだ。
招き猫は、軽やかに宙に浮き、青年の前に着地した。
「人のクセに妖怪を見て動じないとは ナマイキな」
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