夏目友人帳
1
「なあ、君たち」
私は、制服を着た二人の青年を呼び止めた。
「夏目って知ってるか?」
レイコさんが亡くなったと知り、友人帳の行方を調べた。
幸い我が三河家は代々妖祓いをしてきた家系だ。
妖に関する資料はそろいやすく、名前を奪われた妖怪を知れば、自然と夏目レイコという人物の情報が集まってきた。
レイコさんは、若くしてこの世を去り、その子供もレイコさんの孫が生まれてすぐに亡くなっていた。
レイコさんの孫『夏目貴志』は、親戚の家を転々と周り今では、藤原さんという夫婦に引き取られているらしい。
親戚の家を転々と・・・これは、レイコさんと同じ理由だろう。
私が、同級生から『ウソツキ』と呼ばれたように、彼もまた常識の中では異った世界を生きなければならなかったに違いない。
妖をその瞳に映すものの宿命だろう。
「ナツメってさっきの?」
「ああ。えっと・・知ってはいるんですが・・さっき神社の場所聞かれて、何かから逃げるようにどっかに行っちゃいましたけど・・」
神社?!
「ちっ、遅かったか・・・ありがとな!!」
夏目貴志がどちら側に走っていったかだけを聞くと、後を追うために走り出した。
神社に行く必要。
逃げるように。
これだけで、妖に追われていることなど安易に想像がつく。
名前を取り返しにくる妖怪たちは、本気で夏目貴志を狙うだろう。
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