進撃の巨人
4

一番聞きたかった言葉。
一番聞けないと思っていた言葉。

嬉しくて嬉しくて思いが涙になって溢れていく。



「あ…香織。」

呼ばれて顔を上げると、兵長は顔を上げ空を見上げている。
辿るように私も空を見上げると、そこにはさっきまでのくすんだ空は無くなり空一面に星が散りばめられていた。
そして、私たちの真上をまたぐように星の列がまっすぐ伸びていた。

『あ!天の川…』

「ん?」

『ほら、あの星の行列!!あれが“天の川”っていうみたいなんです。今日は一年に一回、恋に落ちた男女がこの天の川を渡って会うことが許される日らしくて。おとぎ話ですけどね。…会えたのかな…その二人…』

天の川を見れた感動で、馬鹿にしていたおとぎ話にでさえも思いを重ねる私の脳裏に、昨日、短冊に書いたことを思い出した。

あ…そういえば…!!

―“この短冊に願いを書けば、叶うんだよ!”

『え…うそ…叶ってる…!…凄い!願いが叶ってる!!』

さっきの涙も止まり、現状に驚いてると

「“兵長と手を繋いで普通に笑ってデートしたい。”だろ?」

兵長の発したセリフに、私しか知らないはずの言葉が出てきたもんだから繋いだ手を外し、ズサーッっと思いきり後ずさりしてしまった。

『な!何で知ってるの!?』

「俺もエレンのバカにひつこくロビーで書かされたからな。そんな時、お前の願いを見てしまった。」

『えっ…でも私の短冊は…!!』

「何でだろうな…小さく小さく折り曲げられて俺の足元に、落ちてきたモノが偶然にも香織の字で書かれた短冊だった。」

兵長も、あの後あそこに行ったんだ…。
この一連の流れは知ってやってくれたことなんだ。

「七夕の威力って案外、馬鹿に出来ないものだな。あんな形で香織の本音を聞くことになったんだからな。」

えっ!じゃ、じゃあ
この偶然すぎる出来事は、今日っていう日、“七夕”が叶えてくれた奇跡…!?

「…ったく、始めから俺に言えば言いものを。」

『だ!!だって!!私が別れを言い出したときも、理由とか聞いてくれなかったし!…初めから私なんか…って、ずっとずっと不安だったんだから!』

前髪を掻き分け、1つ浅いため息をついた兵長は私に近より優しく抱き締めてくれた。

「悩んでたのはお前だけじゃ無い。お前に俺はフラれそうになったんだぞ。」

『…だって…』

「だってじゃない。ったく…いつだって手なんか繋いでやる。一緒に出掛けてやる。簡単な事だ。」

『…好きは?』

「それは、1度しか言わないと、さっき言ったはずだ。」

『えー!?』

「えーじゃない。」

顔は膨れっ面をしてみたものの、心は裏腹で、兵長の思いを聞けて今は凄く満ち溢れてる。

今度からは七夕に頼らず、きちんと思いをぶつけなきゃ…
素直にならなきゃ…





そう、心に誓っていると兵長の手が、頭に触れ唇を重ねて来た。

チュッ…

久し振りの兵長のキスが以前よりももっと近くに感じる。

チュッチュッ…

どんどん深くなっていくキスに、私の体が火照って行く。
唇をそっと離した兵長がじっと見つめて来た。

「香織…お前からまだ聞いてないぞ?」

『…え?』

「俺の事どう思ってるんだ?」

『…そりゃ…その…』

間近にある兵長の顔から視線をそらすが、おでこを合わせられ背けなくなり真剣に眼に吸い込まれそうになる。

『……好きです。』

「好き?…なだけ?」

『…え…ん、と…大好きです。』

「大好き…ほう…。」

何!?何なの?その納得行かない表情は…だって!だって!!私…本当に兵長のこと好き…大好きで…他に何が有るの!?

「俺はセックスを放棄してまでも、お前との関係を続けたかった。その位お前の事を、想ってる。で?香織の想いはどのくらいなんだ?言葉だけで済ませる程度のものなのか?」

なっ…!?た…確かに…
今となれば…体の関係を無くしてでも、付き合っていてくれた兵長の気持ちは凄く…キュンとなってとっても嬉しい。大切に想ってくれてるって感じる…。
でも…私だって…

『私も…私はもっと想ってる!』

「わからねぇな。行動で示すんだな。」

『こ、行動って…わかんないよっ!』

「好きなら、どうしたいだ?」

う…これはっ…!私から何かをさせるつもりなんだ…!

「香織はどうしたいんだ?」

『私は…』

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