進撃の巨人
3

背後からの声にハッとし振り返ると、そこには兵長が居た。

『…兵長…』

ここのところ、こんな間近に兵長を感じた事が無かったら、凄く愛しく感じ、体が熱くなった。

『はい…あいにくの曇りですね…』

「香織、少し時間作れるか?』

突然の兵長の問いに思わず頷いてしまった。
そそくさと宿舎とは全くの別方向に歩き出す兵長の後をついて行く。

こんな風に歩くのは久しぶりで、私は兵長の後ろ姿をジッと目に焼き付けるように見ていた。

ねぇ…あなたはここ数日の会えなかった間何も感じなかった?
寂しくなかった?

私は、毎晩毎晩寂しくて辛かったよ?

そんな事、気にも留めないだろうけど…




トボトボ後ろを着いて行き、町外れにまで出てくると兵長が急に立ち止まり左手を向けてきた。

『…え?』

目の前に差し出された左手と兵長の顔を交互に見ながら、何が何だかわからない表情で問う私。

『どうしたんですか?兵長…』

「チッ…!仕方ねぇな。」

そうひと言、舌打ちして放つと差し出してきた左手で、強引に私の右手を掴み、指と指を絡ませるような形で手を握ってきた。

ギュッと握られた右手と、横に並ぶ兵長。

この突然の出来事に頭がパニックに陥る私は、一度、第三者的視点で私達を想像で正面から見ることにした。

ひゃぁやぁぁぁぁぁぁぁっ!!

こっ!これは…まさに…!!

絵に描いたような手を繋いで歩く恋人同士じゃない!?
初めてのこんな状況に私は緊張し、顔から火を出しながら歩く。

どういう事!?なんなの!?これ…っ!!

かくいう兵長は、涼しい顔で前を向いて歩いている。

『へ、兵長…きゅ、急にどうされたんですか!?』

「…別に大した事じゃないだろう。この間まで裸で抱き合ってたんだ。」

『○×□▼☆:+◆!!!』

そ、そりゃまぁ、そうだけどっ!!

繋いだ手から、兵長の体温が伝わってくる。
触れるのは何日ぶりだろう…
恥ずかしさもあるがそれ以上に嬉しくもなった私は、兵長の手をキュッと握り返した。

しばらく歩き着いた先は、街灯が一本照らす静かなところで街が見下ろせる、高台になっていた。街の家に灯る明かりと街灯が、キラキラ輝いていて私を笑顔に変えた。

『うわぁ!!綺麗!こんな場所があったんですね。知らなかった!ステキステキー!!絶景だぁー!!キラキラしてるー!!え〜と、私たちの宿舎はぁ…と…。あ!あった。きゃはははっ!結構歩いたんですね!!全然そんな風に感じなかったけど!』

えらく感動してしまい、お構いなしに1人騒ぐ私を、兵長がジッと見つめてきた。

『あ…すいません…つい感動して…。』

「いや、いい。そうさせる為に連れてきた。」

そうさせる為?…感動させる為?
わざわざ、この光景を私の見せる為に連れて来てくれたんだ。
さっきの笑顔とはまた違って、ほんのり頬を染めて緩む私の顔。

こんなこと初めてだから、なんだかこそばゆい。



でも…どうしてそんな事してくれたんだろ…

「香織。」

『…はい?』

「…一度しか言わない…」

『え?』




「好きだ。」

まだ繋がれたままの私の手を兵長が力強く握って、街を見下ろしたままひと言放った兵長。
その横顔は、少し赤くなっているようにも見えたが、それ以上に私の真っ赤になった耳を私自身で疑っていた。




『嘘…』

「嘘じゃない。」

『だって…』

「だってじゃない。」

『………うっ…』

私の目からはポロポロと涙が溺れ落ちた。

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