黒執事
3

いや垂れているなんてものじゃない、流れている。
しかも良く見ると身体中傷だらけで、頭からも血が流れ落ちている。
人間なら致死量だが、悪魔だってただでは済まないはずだ。
「何があったんだセバスチャン!」
僕は無我夢中でセバスチャンに駆け寄った。
だがセバスチャンの瞳は虚ろで、僕を見ていたと思っていたはずの目はただ暗闇を見つめている。
「おい、しっかりしろ!何があったんだ!」
叫ぶように言って揺さぶると、セバスチャンはバランスを崩して僕の方に倒れ込んだ。
「うわっ…!」
ボタボタとセバスチャンの血が僕の顔に降り注ぐ。
何とかセバスチャンの身体から這い出ると、僕はセバスチャンの頬に触れた。
…冷たい。
悪魔だからとか、そんなんじゃなくて、氷のように冷たかった。
手も足も唇も、どこも冷たい。
「セバスチャン…」
セバスチャンの胸に顔を埋めながら、僕は泣いた。
涙だってもうずっと流していなかったのに、ちゃんと悲しむことを覚えてくれていた。
涙が頬を伝う。
頬からこぼれ落ちた涙は、セバスチャンの胸へ落ちていく。
誰がこんなことを…!
殺してやる!!
また復讐の相手が増えるのか。
「お願いだ…セバスチャン。起きてくれ…っ」
命令じゃなくて、願い。
セバスチャンへのお願いは、これで最初で最後。
それなのにコイツは起きてはくれないのだ。
父上と母上のように、もう二度と───。

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あきゅろす。
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