黒執事
1
「おい、セバスチャン。これはなんだ?」
「坊っちゃん、それは…っ!」
シエルの大好きなアフタヌーンティーの時間。
そんな平穏な一時に似つかわしくない物騒な代物を、シエルはセバスチャンに差し出す。
セバスチャンは一瞬目を見張った。
なんたって鉄製の戦斧がシエルの白くか細い掌に乗せられ、不気味に光輝いているのだから。
血の痕跡は無く、至って綺麗な戦斧だが、危険なことに変わりはない。
しかしセバスチャンはすぐに取り上げるようなことはせずに、あくまで冷静にシエルに聞いた。
「坊っちゃん。そのような物騒な代物をいったいどうやって手に入れたのです?」
大きくは無いが、その切れ味の良さそうな戦斧は十分に人を殺めることが出来るだろう。
「劉からもらった」
シエルの物言いはぶっきらぼうで、そんなことはどうでもいいと言わんばかりの表情でセバスチャンを見た。
要するに、さっさと“コレ”について説明しろと言いたいのだろう。
少なくともセバスチャンはそう解釈した。
「こちらはご覧の通り、人を殺傷するために作られた武器のようですね。坊っちゃんがお持ちの物は両手で扱うタイプの大斧で───」
「もういい!下がれ」
シエルは突然声を荒げ、セバスチャンの言葉を遮った。
「坊っちゃん…どうなさいました…?」
「下がれと言っている!」
「……御意。失礼いたします」
セバスチャンは踵を返すと、瞬く間に部屋から去って行った。
違うんだ…そうじゃない……!
シエルは去って行くセバスチャンの背中を見つめながら、唇を噛み締めた。
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