テニスの王子様
10

跡部は左手をポケットに入れ、右手を軽く上げると鳳をその場に残し部屋を後にした。
鳳は、跡部の後姿に

「美穂の事、余り虐めないで下さいよ。俺の…大切な……人なんですから……」

と呟くと、先程まで跡部が座っていたソファーに腰を下ろし天を仰いだ。

「絵莉菜さんか……。」

小声で絵莉菜の名前を呟くと目を閉じる。
瞼の裏に食堂での出来事が浮かんだ。
今井絵莉菜(いまい えりな)は、食事が終わると美穂に喧嘩を売って来たのだ。
その喧嘩の内容は、勿論鳳の事だ。
鳳は絵莉菜が苦手だった。
いつも口元に何か企んでいる笑みを浮かべ、男を馬鹿にした様な視線で見据える。
その瞳はとても冷たくて……しかし、それに見つめられると背筋に電流が流れ、気が付いた時には絵莉菜を抱いている。
絵莉菜と一緒に住んでいる、切原も鳳と同じ様な事を感じていると、大分前にだが言っているのを聞いた事があった。

「はぁ……悩んでいても仕方ないか」

鳳は、1度深く息を吐き出すと両手を頬に宛て、2・3度気合を入れる様にパンパンと叩いた。
そして、携帯の電源を

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あきゅろす。
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