るろうに剣心
5
綾香はゆっくりと顔を上げると、その顔を赤く染める。
そして、ギュッと目を閉じて剣心に蚊の鳴くような声で口を開く。
「私は、剣心さんの事…」
「………」
「…ことが、好……ッ」
剣心は、綾香が言葉を言切る前に綾香の唇を己の唇で塞いだ。
綾香は突然の口付けに驚きで目を見張らせた。
剣心はそれを細めた目で見ると、口付けを徐々に深くさせる。
2人の口の端からは、誰のものかわからない唾液がゆっくりと流れ落ちる。
そして水っぽい音が、少しばかりくぐもって辺りに響き渡る。
当然な事に綾香の耳にも、その音が聞こえる訳であって、綾香の頭はボウとしていく。
そしてその音は、耳を塞ぎたいとも、思わせるようなイヤラシイ音であった。
そんな口付けがどれくらい続いたのだろう。
しばらく経つと、息苦しさを覚えた綾香が小さく剣心の肩を叩く。
剣心はそれを合図に唇をゆっくりと離す。
すると名残惜しそうに、透明な橋が綾香と剣心の間に出来た。
綾香は酸素を思いっきり吸い込むと、むせかえる。
それを剣心は苦笑いを浮かべながら、綾香の背中を擦った。
「済まぬ…」
「いや…。大丈夫ですが…いきなりどうしたんですか……?」
「…………お主があまりにも可愛かった故、我慢がきかなかったでござる…」
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