るろうに剣心
4
「…あぁ。綾香は拙者の事を…どう思っているでござる……?」
「…私は……」
剣心は少し不安そうにだが、真剣に問う。
あまりの真剣さに、綾香も自分も真剣に答えなければと思うが、言葉が出てこない。
それが酷くもどかしい。
言いたいけど、それは許されない。
何故なら綾香は遊女だから…。
遊女(道具)が人を愛してはいけないから…。
綾香はこの時ほど、自分が遊女である事を恨んだ事はなかった。
(『恨み』で人を殺せるなら…こんな自分を殺したいものね……)
内心、苦しそうに苦笑いを浮かべる。
そんな雰囲気を読み取ったのか、剣心は綾香のことを力いっぱい抱き締めた。
「…そんな顔をしないでくれ……ッ。拙者はそんなつもりでお主に言ったのではござらぬ。だから…ッ、そんな顔をしないで欲しいでござる」
「剣心さん…」
「…欲深くなるものではござらぬな……。拙者はどうしても、お主の事になると欲深くなっていかんでござる」
「……、…の」
「?」
剣心が弱々しく笑って見せると、綾香は俯いて何かを言った。
だが、それはあまりにも小さい声だったので剣心は聞き取る事が出来なかった。
剣心は首を小さく傾げる。
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