るろうに剣心
6
人斬りという過去の過ちを背負い、それが剣心を流浪人として孤独へと近づける。
それが一番怖くて悲しい。
剣心に安らぎを、戦いの人生に癒しを与えたい。
一瞬だけでなく、ずっと一緒にいてアタシが剣心を支えてあげたい。
剣心にとってもアタシが心の拠り所であってほしい。これからもずっと変わらず。
それがアタシの一番の理想。
だけど剣心本人でさえ気付かない程、流浪人としての孤独が根付いて、その理想を邪魔する。
そして孤独主義の流浪人は剣心を苦しめる。
剣心が流浪人じゃなかったら…人斬りじゃなかったら…
それだったらどんなに楽だろう。でも、それは今いる剣心じゃない。アタシの知らない剣心になっていた。そしてきっとお互い出会う事も無かった筈。
いわば神様に感謝するべき皮肉な運命。
やりきれない思いが胸に残る。
……
黙ったままなかなか続きを切り出さない剣心。
いつの間にかアタシの涙で少しばかり湿っていた剣心の肩は、もうとっくに乾いていた。
……。
ギュッッ…
弱々しかったその腕が、始めに抱きついた時のように再び力強くなる。
「剣心……?」
またもや突然の行動に驚いてしまった。
「人斬りとしての罪の深さも知ってる。
孤独の流浪人として間違ってるのも分かってる。
薫殿に対しても申し訳ないと思ってる。
…だが、どうしても拙者、こうして薫殿に触れていたいと思ってしまう…。
ましてや、薫殿が泣いていると慰めてやらなくてはと思う。
この手で抱きしめなくてはと思う。
それに拙者のせいで薫殿が傷付いたなら、尚更放ってはおけぬ。
勝手かもしれないが、これが拙者の今の気持ち。心からの本心…。」
顔は見えないが、剣心の顔はきっと赤い。
顔全体を真っ赤にさせた剣心が頭に浮かぶ。
力強く握るその腕はどこか強ばってぎこちない。
剣心の胸から振動と共に、伝わってくる心臓の脈打つ音。
まばらなリズムで小刻みに、忙しくて大きな音。
口では落ち着いて話した剣心だけど、心は凄く緊張してる。
アタシは知ってる。
剣心がどれ程勇気を出して話しているか。
落ち着いて話す剣心だけど、本当は恥ずかしくてかなり緊張している事も。
そんな剣心が少し可愛く、とても愛しい。
そして何より、そこまでして彼が話してくれた彼の本心が、
彼のその言葉が嬉しかった。
その言葉は嘘偽りの無い、彼の本当の気持ち。
だからこそ嬉しい。
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