るろうに剣心
4
「おろ?何の事でござるか薫殿…?」
本当に困惑した感じの剣心が尋ねる。
そんな剣心を見て、勝手かもしれないが、更にアタシの悲しみが深まる。
「…剣心はアタシと一緒にいて嬉しくないの…?
剣心はアタシの気持ち知っているくせに…、ちゃんと剣心に伝えたのに…、
なのに、何で剣心は何も応えてくれないの?」
恥じも悔いも無い。
だが、言葉にした途端自然と涙が頬を伝う。
どうやら我が侭なアタシは涙も流さなくてはいけないみたい…、
そんな自分に半ば呆れていると…、
ギュウゥゥ……
キツすぎる位強く抱き付かれた。
視界に緋色の髪が少し写る。
視界にはいないが剣心の匂いがする。
確かな温もりを感じる。
どういう訳だか剣心に抱き付かれた。
「剣…心…?」
あまり出来事に驚きはするものの、この温もりから離れる勇気が無かった。
今からどんな事を告げられるかも分かんない…。
剣心は優しいからアタシの涙につい、なのかもしれない…。
理由は何だって良かった。ただ…ただ…この居心地が余りにも良すぎて、離れる事など到底出来なかった…。
「薫殿…。」
ドクン。
胸が詰まりそうになる。
彼から伝わる言葉が、
その先の悲しみが、
ましてやこんな近くで告げられる。心臓の音まで聞かれてしまいそうで怖い。
それに、この居心地が良いままで伝わる悲しみはどんなものなんだろう…
つい、彼から離れそうになる。だが、
ギュッ
離してはくれない。
何故?
「すまぬ。本当にすまぬ…。」
ズキッ…
胸が痛む。
剣心はやっぱり優しい。
優しさの中で告げようとしてくれてる。
アタシが少しでも悲しまなくてすむように。
できるだけ優しく。
自分の腕の中で、なるべく傷つけないように、彼はアタシの気持ちに応えるつもりなんだ。
でもそれはアタシにとって逆にツライ。
今はこの温もりから離れたくて仕方がない。
でも、これも彼の気持ち。アタシに対する彼の気持ちの一つだから。
アタシは、このまま彼の気持ちをちゃんと受けて聞こう。
そして彼のどんな気持ちも全て受け止めよう。
涙はもう渇いてる。
アタシは剣心の腕の中で覚悟を決めた。
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