るろうに剣心
3

一気に落胆という言葉がのしかかる。

てっきりアタシに殴られると思って身構えていた剣心が、再び黙り込んで意気消沈したアタシに問いかける。

「薫殿…?」

全く訳が分からないといった感じだ。

「拙者、何かまずい事でも言ったでござるか?」

さっきまでの穏やかな時間が懐かしくおもえた。今漂うのは重苦しい空気。

いや、アタシがそうしているからなんだけど…

剣心は悪くないと言えば確かに悪くない。アタシが勝手に剣心に怒っているだけ。だけど、どうしても今の剣心の態度はアタシにとって哀しみでしかない。

剣心と一緒にいれるのは嬉しい…

さっき剣心に乗せられて思わず口にしてしまった言葉。
恥ずかしいけど、紛れもない本心。
だから口にして恥じて、悔やんで、悲しんだ。それ位自分にとっては大きな言葉だった。
それはアタシの剣心に対する気持ちでもある。

なのに剣心は…

アタシの言葉をサラッと受け流した。

まるで何事もなかったかのように…。

本当にアタシの気持ちに対して何も思っていないみたい…。

さっきも哀しかった。だが今回はもっと哀しい。

剣心は、普段から自分の気持ちはあまり言葉にしない方だ。けど、たまに彼の口から語られる彼の本心。
それは剣心がアタシに少しでも心を開いてくれてる確かな証拠で、それが、剣心がアタシの気持ちに対して、少しでも応えようとしてくれてる気がして、何より嬉しく思えた。
きっと剣心もアタシと同じ気持ちだ、と心の何処かで期待混じりで確信していた自分もいた。

だが、そうでは無かった。

アタシの自惚れだったみたい。

我ながら恥ずかしい。

今のアタシは確信も自信も無い。あるのは深い悲しみ。

だけど、なのにまだどこか期待している自分がいた。

いや、期待では無く、まだ認めたくない…。

まだ認められない我が侭な自分がいた。だから、

「剣心…。なんで?」

彼の口から聞こう。

時々アタシに本音を語ったその口で、アタシを何度も喜ばしたその口で、

ほんの少しの淡い期待と夢を見させてくれたその声を聞いて、その優しい瞳をちゃんと見ながら、その彼自身の口から聞きたかった。

もう、二度と期待などせぬように…。

そう決意して、さっきからアタシの名前を心配そうに呼ぶ剣心にやっと応えた。

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あきゅろす。
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