るろうに剣心
2
「…貴方、遊女自身を買うなんてよく軽々しく言えるわね。遊郭で遊女を買う事も、かなりの大金がいるのに…、遊女そのものを買うとなると更にお金がかかるのよ?その事、ちゃんと理解している訳…?」
綾香は今にも泣き出しそうな声で言った。
自分が遊女であると言う事を自覚し、剣心への思いが綾香を複雑にさせた。
(どうして、私は遊女なの…?)
そう言うと、綾香の胸がギュッと締め付けられる。
苦しい…。
すると綾香は、ポタリと光る雫を頬を伝え、流し落とす。
今までの思いが溢れ出してしまったのだ。
剣心はそんな綾香を見ると、優しく抱き寄せた。
そして、綾香を落ち着かせるように頭を優しく撫でる。
剣心は綾香の耳に口を寄せ、囁くように口を開く。
「今まで辛かったんだ…。だから、綾香はもうそろそろ幸せを噛み締めてもいいはずでござる」
「………緋村さん…」
「拙者はいつも名で呼んで欲しいと言っているでござろう。名で呼んでくれ…」
「け…、剣心……さん」
「おろ。最後に『さん』が付いてしまっているでござるよ」
剣心は苦笑いを浮かべながら、そう言った。
そんな剣心に綾香もつられて笑う。
綾香の笑った顔を見た剣心は、目を細めて優しく「やっぱりお主は笑っているのが一番でござるよ」と囁くように口を開く。
綾香はそんな剣心にひっそりと、頬を赤く染める。
そんな綾香に気が付いたのかは知らないが、剣心はそのままの優しい笑みで、そっと綾香の頬に触れた。
それに綾香はちょっとだけだが、驚いたらしく肩を微かに揺らす。
剣心は綾香の反応にちょっと目を丸くし「驚かせて済まぬ」と軽く謝罪する。
「いや、剣心さんが悪いのではないです。お気になさらないで」と綾香はやんわりと言う。
その様子は華やかとも言えるだろう。
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