るろうに剣心
8
宗次郎は顔だけ綾香の方に向けて質問した。
「ははっ。そんな不思議そうな顔しないで下さいよ。あなたが僕たちの名前を知ってるのに、僕たちがあなたの名前を知らないなんておかしいでしょう?」
宗次郎はニコニコと笑って言った。
「綾香、です…っ!」
「ふぅん、綾香さんかぁ。一応覚えておきますね。」
それだけ言って宗次郎は志々雄と共に去って行ってしまった。
「待って!志々雄様…っ!」
そんな綾香の声も虚しく、志々雄と宗次郎は闇の中へと消えてしまった。
「…志、々雄…様っ…!」
綾香は崩れ落ちて地面に膝を付き、涙をポロポロと流した。
「ねぇ志々雄さん、彼女綾香さんっていうらしいですよ。」
「それがどうした。」
志々雄は表情一つ変えずに返事をした。
「あの人、本当に志々雄さんが好きみたいでしたよ?」
「…俺は女を信じねぇ。」
志々雄は少し怒った口調で宗次郎に言った。
「怒らないで下さいよ。そのことは知ってますよ?ただ、言ってみただけです。」
─そうだ、俺は女を信じねぇ。
女は…俺を焼き殺そうとした維新志士共に俺を売りやがった。
─俺は愛していた。
なのに…
志々雄は拳を強く握りしめた。
─俺は女を信じねぇ…
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