SHORT U
勝利を目指して。(♂新×高)
飛び散る汗。
行き交う歓声。
響くボールの音。
ただ今絶賛試合中。
これに勝てばインターハイへの出場が決まる一戦でもある。
負けるわけにはいかない。
なんとしても今回だけは。
なんでこんなに必死になってるかというと理由がある。
『はい、ガキさん』
「あぁありがと」
2クォーター後の長い休憩で、ベンチに座りながら、カメからもらったスポーツドリンクを喉に流し込む。
『愛ちゃん…来てますね』
「うん…」
目を左上にやれば、手を振ってきてくれる愛ちゃん。
かーっと顔が熱くなる。
だけど、さっきまで体にのしかかってた重さが一気に軽くなった気がした。
『…頑張ってくださいね。どっちの意味でも』
「ありがとう」
どっちの意味でもって言うのは、試合のこともあるだろう。
インターハイを賭けた試合も大事だけれども、僕にはもう1つ大事なことがある。
―― 今日の試合、勝ったら…愛ちゃんに告白する。
カメと約束したんだ。
カメは、そんなことでも「頑張って」と応援してくれた。
そのカメのためにも、なんとしても今回は勝たなきゃ。
―― ビーーッ。
後半戦開始の合図が鳴った。
『よっしぁーっ!』
「はぁ…、はぁ…」
結果は、…僕たちの勝利。
最後の最後で、カメがカットしたボールが僕に来て、スリーポイントで逆転勝利。
こんなドラマみたいなことが起きるんだなってぐらいに。
「…カメ、ありがとう」
『どーいたましてぇー』
そう言って、すぐに田中っちのとこに走ってった。
『里ー沙ーちゃん』
「うおっ愛ちゃんか//」
『んふーおめでとう!かっこよかったがし』
「あ、ありがと…//」
現地解散と言われた仲間達は、もう既に帰ったのかいない。
他のチームも多くはいない。
「ね、愛ちゃん」
『んー、なんや?』
「外出よっか」
『そうやね』
「じゃあ、ちょっと待ってて」
急いでユニフォームを脱いで、移動専用のジャージに着替える。
「よし、行こっか」
『うん』
会場を出ると、もうオレンジ色の夕日から僕たちの影を作り出した。
今…、今しかない。
「ね、ねぇ愛ちゃん?」
『んー?』
ゆっくり歩き出した足を止める。
愛ちゃんも僕と同じように止めた。
暴れだす心臓を深呼吸して落ち着かせた。
それでも、静まらない鼓動。
「愛ちゃん、今日ねどうしても勝ちたかったんだ」
『え、うん』
「カメと約束したから」
『あっそうなんや。インターハイはすごいもんなぁ』
そんな呑気なこと言ってるけど、僕にとったらインターハイよりも大事なこと。
きっと愛ちゃんは気づいてないだろう。
「違うよ。インターハイも大事だけど、それよりもっと大事なこと」
『えっ、なん?』
僕は最大限の勇気を振り絞って。
「…愛ちゃん、よかったら僕の彼女として、隣で支えてくれませんか?//」
『…えっ?//』
「僕…、愛ちゃんが好き//」
『…えっ、と…その//』
「今日勝ったら愛ちゃんに告白するって、カメと約束してたんだ。…返事は、いつでもいいから」
『・・・』
よしっ帰ろう!って歩き出したものの、動こうとしない愛ちゃん。
顔を俯かせてるから表情が読み取れない。
「愛ちゃん…?」
『…里沙ちゃ、』
「…え?//」
すると、急に僕に近づいてきて抱きしめてきた。
愛ちゃんの匂いが鼻をくすぐる。
「えっ、あの愛ちゃん?//」
『…ええよ//』
「…えっ?//」
『あーしもな、里沙ちゃんが好きやざ。…やから、ずっと里沙ちゃんを支えるがし//』
「ほ…ほ、ほほほんと!?//」
『…うん//』
照れくさくて、頭をがしがし掻く。
愛ちゃんも恥ずかしいのか、僕の胸あたりに頭をぐりぐり押しつけてくる。
は、恥ずかしいのだ…//
だけど、内心はすごく嬉しい。
「…愛ちゃん、…キス、していい?//」
『…ん』
目を閉じて、待ってる愛ちゃんの唇をキスをする。
初めてのキスはレモン味とか言ってるけど、そんなの分かるわけない。
ただ…、甘く優しいものだった。
「帰ろ?」
『うん』
手を繋いで、歩き出す。
2人の影はさっきよりも長く、距離が近くなってた。
END
ありきたりな作品w
ここで負けて告白という流れもよかったんですが、あえての勝利ということで。
インターハイは規模でかかったかな←
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