『〜♪』 鼻唄混じりに教科書をめくり、譜面台に譜面をおく。 「なあ、みょうじ…」 『なに?』 「この音符は何じゃ?」 仁王は、譜面の上から二段目の端っこの音符を指差す。 下の線から、2番目。 『ソだよ』 「そうだよ?」 『………』 「すまん、悪かった」 『ドレミファソラシドの、ソ』 “ありがとな”と仁王は銀髪を揺らして妖艶な笑みを浮かべる。 ……何であたし、コイツの隣なんだろ。 疑問を振り払って、リコーダーの穴を指で塞ぐ。 中3になってもいまだにリコーダーってしょぼいったらありゃしない。 ほかの楽器にして欲しいものだ。 「なあ」 『今度はどれ?』 “そうじゃのぅて…”と仁王がリコーダーをあたしに見せて、 「ソってどこを抑えるんじゃった?」 『上側、全部』 「上側……」 どうやら言っても分からないようで、漫画風に例えるとしたら、頭にはてなマークが浮かんでいた。 ふぅ、と溜息をつくとあたしは仁王の名前を呼び、 ソの抑える位置を教えた。 音楽の時間-仁王- (音楽は嫌いじゃが、 君と奏でる音が好き) |