「春はあけぼの、」 古典。好き。 古典の授業。嫌い。 古典は好きなのに、古典の授業は嫌い。 理由はただ、一つ、 「ようよう白くなりゆく、」 (……ねむ…) 古典の先生の声が子守唄にしか聞こえない。 この先生、声が綺麗だから、教科書読んだら読み聞かせになっちゃうんだよね。 「みょうじまた寝そうだぞ」 小声で隣の柳が私を突く。またで悪いけど、寝そうだよ。 「これで今週3回目、」 『データ取る前に眠らないように目を醒まさせてよ』 「無理に等しい。」 ああ、そうですか。 あの柳に“無理”と言われた女子は私が初めてじゃないかな。…きっと初めてだ。 『じゃあ、私寝る...』 「眠るな」 『なら、目を醒まさせて』 「それは無理だ」 『…おやすみ、』 こんなくだらない言い合いが、古典の授業中は続く。 でも、結局私は寝ちゃって、 綺麗な声の先生に起こされて、 “また、寝てたわね”と先生とクラスメートに笑われて。 ああ、だから古典の授業は嫌いなんだ。 古典は好きなのに。 古典の時間-柳- (君が寝たら、俺は喋る相手がいない。 寂しい。寂しいから、 寝ないで、) |