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モノクロカラー不二



英語なんて大嫌い。誰が英語を日本に伝えたのさ。勝海舟か?徳川の人か?ああ、ペリーか。あいつ黒船に乗って日本に開国迫ってきたもんね。あいつこそ黒幕だ。

とまあ、無駄な考えを張り巡らせてもこの嫌で嫌で仕方ない英語の時間が終わるはずもない。

僕、英語嫌いなんですけど。

黒板には白いチョークで夥しい数の英文が書かれている。え、この5問を解けない人は放課後に補習だって? …冗談じゃない。僕補習決定じゃないか。


白い紙に紺を少し薄めたかのような線が延々と引かれたノートにとりあえず英文5問を書き写す。まだ、“意味を書きなさい”だからましだけど、“英文で書きなさい”だったら僕は死んでたね、確実に。

空は天つ風が吹きそうな程の青。そよそよと吹く風は外の呑気さを教室の中にいる僕にしらしめているようにしか見えない。

自分の座っている位置から見えるグラウンドを見てみた。あ、3年のどっかのクラスがサッカーしてる。いいな、サッカー。僕もしたいよ。ってか、どこのクラスだろ。えーっと…知り合いいないかな…あ、不二と菊丸。じゃあ、3年6組と5組の体育か。いいな、6組と5組。僕と変わってよ。英語よりサッカーの方が数十倍楽しいじゃないか。


試合は菊丸と不二が敵じゃないことを見るとどうやら6組対5組らしい。わ、5組可哀相。だって菊丸アクロバット得意だから、こういう競技に滅法強いんだよね。昔、サッカー部の助っ人として大会に出たら3得点あげてチームに優勝をもたらしたとか(菊丸が)言ってたような気がする。

不二は何をしているのかと思えば、……あれ、不二が攻めてない? ってか、よく見てみれば、いけいけドンドンタイプの菊丸がゴールキーパーしてる。あ、そっか。アクロバットでゴールを守れば、無敵だもんね。無敵であり、ある意味の反則。


不二。青学の天才とか言われてる味覚音痴の天才不二周助。不二が何かに“攻める”という行為を滅多に見たことがないのでこれを見ている今のこの瞬間はレアに等しい。(乾が聞いたら羨ましがるだろう。あとから自慢してやろ。)白と黒というモノクロの象徴のサッカーボールを右足で器用に蹴りながら、前から来るフォワードの奴やディフェンダーをいとも簡単に右へ左へと受け流す。さすが不二周助。天才の領域はテニスコートだけじゃなかったのね。不二が右に行けば、ボールも右に。不二が左に行けば、ボールも左に。まるでボールが不二の足に吸い付いているようで。え、あれ足に紐なんかついてません?…ついてないねー。何でついてないのー?

そんなことを思ってたら、不二が右足を上に蹴り上げてボールをずどーんみたいな効果音が聞こえてきそうな重そうなシュートを放った。あいつ力が無いとか言ってなかった?だからタカさんが羨ましいとか言ってなかった? 絶対嘘だろ。あのシュートは何だよ。ずどーんだぜ、ずどーん。不二の足は何かを砕くことのできる魔法の足だと思うよ、ほんっと。その魔法の足から放たれたずどーんという効果音のするボールがゴールに孤を描くような感じで突き刺さった。ゴール。1点追加。うっわ、何してんだ不二周助。いじめか。5組のゴールキーパーに対してのいじめかコノヤロー。5組のゴールキーパーは怖くてゴールから離れてるし! まあ、それは得策だね!当たってたら、手がぼきぼきになってただろうね!ぼきぼきにならなくて僕は嬉しいよ、5組の田中君(仮名)。ってか、不二のシュートが海堂のスネイクに似てた気がする。さすが不二周助。テニス部の技をことごとく吸収してるね。


あ、菊丸が走って来て不二に抱きついた。不二が点数をあげて喜んでるんだろうな。くそー、僕もサッカーやってゴール決めたいぞばーか。不二が菊丸に笑いながら何か喋りかけてる。口の動きから多分『英二、キーパーがゴールから離れちゃ駄目だろ?』だろうな。子供に何かをさとすような口調だな、不二。不二さん、不二さん、菊丸はあなたの子供じゃないですよ。

空は綺麗な程青くて。雲は苛々する程白くて。その下で走り回っている5組と6組が憎い。もっと詳しく言ったらにこにこと笑っている不二が憎い。僕と変わってよ不二。


そんな気持ちを込めて睨んでいたら、不二がこっちを向いた。え、気づいてたの!?うっげ、何で!?ありえねーな、ありえねーよ、不二。これの著作権は桃城にありますよ。

不二は笑って。口を開く。あ、口パクだ。


《なまえ、ちゃんと授業受けなきゃ駄目だよ。》


知ってたんだ。僕が見てたの知ってたんだアイツ!!うっわー!すっごい恥ずかしいんですけどっ 何で知ってたの!?何で分かってたの!?




「みょうじさん」

『え、あ、はい!?』

「どうして窓の外を見ているんですか?今は英語の時間ですよ。窓の外を見る時間ではありませんよ」

『はーい…』




不二のせいで放課後補習になっちゃったじゃないか。ああ、くっそ嫌になる!
とりあえず、今は目の前の英文を解くことに集中しよう。それで、昼休みになったら手塚の美味しいだし巻き卵を奪いながら不二に文句を言おう。そうしよう。

そんなことを考えながら僕は英文に目を移した。








あなた以外何も見えない




(不二のあほ!不二のせいで補習になっちゃったじゃん!)







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