愛おしいと気づいたとき、貴方の側には親友が必ずいた。 狂おしい程好きだと分かったとき、貴方は親友の為に泣いていた。 「なまえさん、」 『ん、もう大丈夫。そう何回も泣かれちゃやぎゅに迷惑だしね。』 「いえ、私は大丈夫ですよ」 涙を溢れさせるなまえさんは余りにも小さく、か弱く見えた。 拭う自分の手の意味の無さに苛立った。 街灯が燈る道を二人並んで歩く。マフラーは暖かいので手に持ったままだった。 あの日、初めての涙を見たとき、貴方は仁王君を好きになってしまったと泣いた。それは端から見れば1+1=2という計算のように当たり前のことだった。 そのとき、自分の恋が散ったと悲しんだ。 しかし、なまえさんは涙声になりながら、『自分は仁王を好きになってはいけない』とまた涙を1粒流した。 『やぎゅ?』 「あ、何ですか?」 『聞いてた?』 「…いえ、あまり…」 『だからー、明日は早い?』 「今日と同じだと思いますよ。」 『そっか。』 何にせよ、それは私にとってチャンスであり、利用しないという手はなかった。 仁王君への心を騙すために私を利用してください あのセリフをなまえさんは迷惑がかかると嫌がったが、力になりたいと言えば、『さすがやぎゅ、紳士だね』と涙を渇かせた後のある頬を少し緩めた。 いつかは、いつかはその涙が仁王君の為ではなく、私の為であるように。いつかはその笑顔が仁王君を見てこぼすのではなく、私を見てこぼすように。 ああ、 灰に浮く この行為を誰かが卑怯だと、卑劣だと蔑んでも、 貴方が私のものになるようにと祈る、 -------- 黒→白→灰の三部作です。 柳生→主人公→│←仁王 主人公と仁王は好きだけど両思いになれない、みたいな感じですね。 |