黒に沈む仁王(黒→白→灰)
愛おしいと嘆いたとき、お前はもう俺の側にはいなかった。
狂おしい程好きだと気づいたとき、お前はもう親友のものだった。
『お、仁王。部活終わった?』
「まあの。」
『そ?』
夕暮れ、そんな時間はとっくの昔に過ぎた。空は闇の帳が降りてきたよう黒く、黒かった。
立海のお洒落なチェックのマフラーを首元に巻き付け、ぬくぬくとしている目の前のなまえに少し苛立つ。
いつからその距離は離れてしまったのか。いつからお前は俺を苗字で呼ぶようになったのか。
「お待たせしました、なまえさん」
『ん、だいじょーぶ。』
へら、と笑うなまえに柳生を目を細めて笑った。
行こっか。行きましょうか。
二人でそんな話をして、なまえと柳生はいわゆる恋人繋ぎをして俺に『ばいばい』と手を振り闇の中へ吸い込まれて行った。
お前の隣は俺だったのに、いつの間にお前の隣は柳生に変わった?
嘆きは空に消えることなく。
愛しさは君に届くことなく。
ああ、
黒に沈む
愛おしいと気づくのが遅かった、
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