キーンコーンカーンコーン。 『んー...鐘が鳴る鳴る法隆寺』 「法隆寺は神奈川には無いけどね。」 向かい合った立海大テニス部部長は笑いながら、そういうと筆を動かす。 只今、美術の風景画の色塗り中。 あたしは、手を止めて休憩中。幸村は手を動かして色塗り中。 何だこの真面目さの違いは。 『幸村、空塗るの上手いね』 「そう?」 幸村はなおも笑って。 この笑顔、崩れるときはあるのだろうか。 ……否。これ以上考えるのは馬鹿がすることだ。 「俺はみょうじの人の塗り方、好きだな」 『オイオイ幸村君。何を言うのかね。風景画には人はいないぞ』 現にあたしの絵の中には人っ子一人存在しない。 なのに、褒めるってどういうことだ。 「みょうじ、口調変だよ」 あ、また笑った。 「確かに、今は描かれてないけどこの前の人物画の塗り方が綺麗だった」 『ああ、この前のね...』 幸村は空を塗るのが上手くて、 あたしは人を塗るのが上手くて、 『2人で絵を描いたら綺麗だろうね』 「そうだね。 今度、2人で描こうよ」 美術の時間-幸村- (あわよくば、俺と君との未来も、一緒に描こうよ) |