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迷子(千髑?黒曜ほのぼの?)
髑髏は道に迷っていた。
どこへ行っても家、家、家。同じところをぐるぐる回っているのか、近づいているのか遠ざかっているのか。
分からない。帰れない。

今日のおつかいは髑髏の番だった。いつも通りにスーパーへ。
千種が書いてくれたお買い物メモを握りしめ、おつかいはもう慣れた。
かごの中に放りこんだ食材を見て、今日の夕食は何だろうと思う。あ、卵が特売になってる。

何だか今日は特売の日だったみたい。髑髏の小さな手の中には、少しの小銭が残っていた。今度はそれを握りしめて、さあ帰ろうというとき。

〜〜・・・いしや〜きいも〜♪・・・・・・

「いしやきいも」

流れてきたメロディ。髑髏は呟いた。知ってる。いつかボスが、甘くてあったかくて、おいしいって教えてくれた。髑髏は食べたことが無かったけれど、甘いものは、好き。
みんなで食べたいな・・・・・・。
髑髏は音源を探し走った。

「いしやきいも」を売っていたおじさんはいい人だった。
動く車を追いかけて、息を切らしていた髑髏。やっと追いついて、
「あの、これで3つ買えますか・・・?」
差し出された小銭を見て、おじさんは難しい顔をした。
「ううん、ちょっと、3つ買うには足りないねえ」
でも、それから人のいい笑顔になって、
「おつかいの残りのお金かな?いい子だね、じゃあ、おまけしてあげよう」
「ありがとうございます・・・っ」
買い物袋をいくつもぶら下げた髑髏から、半端なお金を受け取って、おじさんはほかほかのやきいもを3つくれた。
おじさんの優しい親切が嬉しくて、髑髏はほんのり笑顔になった。
それで、あったかいやきいもを胸に抱いて、帰ろうとして気づく。

ここは――――――どこだろう?

やきいもの車を追いかけるのに夢中で気づかなかった。いつのまにか、周りは全部知らない景色だった。
どうしよう、きょろきょろしながら髑髏は歩いた。けれど、いっこうに見知らぬ土地が広がるばかりだ。
早く帰らないと。髑髏は焦る。夕食が遅くなったら、きっと犬はすごく怒るだろう。千種もきっと、大きくため息をつくだろう。

髑髏は歩いた。でも、帰れない。日が傾き始めた。
もう二度と帰れないんじゃないかと、不安に頭がくらくらしてきたとき。

「いた」

髑髏の少し後ろのほうから、よく聞き慣れた声がした。
その声を聞いただけで、あんなに重くのしかかっていた不安は、霧が晴れるようにさあっと消えた。
「犬、いたよ。こっち」
振り向くと千種と犬が角を曲がって、髑髏に向かってくるところだった。髑髏を探しに来てくれた。
「ちくさ、けん・・・・・・」
「お前どこほっつき歩いてるんらよ!」
犬は髑髏がぶら下げていた重たげなスーパーの袋をひったくった。
すごく怒っているように見えた。もうそろそろ日が沈む。夕食が遅くなるのは確実で、だから食いしん坊の犬はいらいらしているんだろうと思った。
「ごめん」
髑髏はうつむいて謝るしかできなかった。
「こんなところで迷うなよな!」
犬はそれだけ言うともう歩き出してしまった。
犬の背中をしばらく見て、それから髑髏は千種を見上げた。怒られると思った。千種だから、ただ呆れられるかもしれない。でも、仕方ないと思う。髑髏は二人にすごく迷惑をかけたから。情けなくて、胸が苦しくなった。
「なんで迷子になるの」
「ごめん」
はあ、とため息をつかれて、ぎゅう、と心が締め付けられる。
「心配したんだ」
「え・・・・・・?」
「犬も、俺も。帰ってこないから、何かあったんじゃないかと思って」

髑髏が買い物に行って、1時間がたった頃。犬も千種も、髑髏の帰りが遅いと感じていた。スーパーがたまたま混んでいるのだろうとか、そう理由をつけて、しばらくは放っておいた。しかし、2時間を過ぎようかというとき、ついに犬が飛び出した。
「あのオンナ何してるびょん!探しに行ってくる」
いつもなんだかんだ言って、本当は犬が髑髏のことをちゃんと考えているのは、分かっていた。千種も犬の後を追った。「めんどい」とは言わなかった。
髑髏を見つけたとき、千種自身、ほっとしたのを感じた。無事でよかった。犬が怒っていたのだって、自分では気づいていないかもしれないけれど、髑髏のことが心配だったからだ。スーパーの袋をひったくったのも、ずっと持って歩いていたんだろう髑髏を思いやった、彼なりの気遣い。

「何で迷子になったの?」
「・・・いしやきいもの、車を追いかけてて」
みんなで食べようと思って、という言葉は呑みこんだ。言い出しづらかった。
すっかり冷めてしまったやきいもの紙袋を、髑髏はきゅ、と抱きしめた。
「・・・・・・帰ったら、温めなおしてみんなで食べよう」
千種が言った。髑髏は大きな目を更に大きくして驚いて、それから、表情の少ない彼女にしては珍しく、
とても嬉しそうなはにかんだ笑顔になった。
「うん」
それから先に行ってしまった犬をつかまえて、3人で一緒に帰った。





ずいぶん長くなってしまいました;
もっとちゃんと千髑にしようかとも考えましたが、やっぱり私の中の千髑はあんまり恋愛ぽくはないので、こういうほのぼのな感じになってしまいます。
てゆーか、もう千髑とは言えませんね・・・(爆


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